Drifting Laurent(2025)
監督:Anton Balekdjian、Léo Couture、Mattéo Eustachon
出演:Baptiste Perusat、Béatrice Dalle、Thomas Daloz etc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日、カイエ・デュ・シネマベスト2025が発表された。ペドロ・アルモドバル『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』を押しのけて10位にランクインした『Drifting Laurent』は日本の映画関係者および日本未公開映画ハンターが全く認知していなかった作品であり、あまりのダークホースっぷりに驚かされた。そもそも、本作はカンヌ国際映画祭のACID部門で上映された作品であり、フランスでは12月31日に公開なので、ランクインを予想できなくて当然といえば当然なのだが、監督名も全く知らなかったため意外だった。早速入手して観たのだが、今回のベストに選出されたバカンス映画『L’Aventura』と対極にあるバカンス映画となっており興味深い作品となっていた。
『Drifting Laurent』あらすじ
À 29 ans, Laurent cherche un sens à sa vie. Sans travail ni logement, il atterrit dans une station de ski déserte hors-saison et s’immisce dans la vie des rares habitant·es qu’il rencontre. Quand les touristes arrivent avec l’hiver, Laurent ne peut plus repartir.
訳:29歳のローランは、人生の意味を探し求めていた。仕事も住む場所もなく、オフシーズンの人気の無いスキーリゾートにたどり着き、そこで出会う数少ない住民たちの生活にどっぷりと浸かる。冬が訪れ、観光客が押し寄せると、ローランはもうそこから離れられなくなる。
虚無な観光地を彷徨うモラトリアム天使
パラグライダーで滑空しながら山へ降り立つ。まるで天使が降り立つようにオフシーズン、廃墟同然の閑散とした山に29歳自分探しの旅をしている青年ローランが現れ彷徨う。街は活気がなく、リミナルスペースのような不気味さを有しているのだが、そこには個性的な住民がいる。布団にうずくまり、セルフネグレクト的にタバコを吹かすばあちゃんに、通りすがりの人を撮影する男、バイキングのコスプレをする変な人。それぞれが虚無に生きながらもうっすら繋がりを求めている。ローランはバイセクシャルとして男女関係なく肉体を差し出し、人々に癒やしを与えていく。
『L’Aventura』が計画性のない旅における自由さと子どもを連れた旅行のストレスを軸とする子育ての無軌道さからくる閉塞感という対極の側面をバカンス映画の枠組みの中で統合していたが、本作はオフシーズンのバカンスにおける人間を外部の視点から見つめていくことにより人間の他社との関係に対する渇望を見出す映画となっており、今回のカイエ・デュ・シネマベストは興味深いラインナップとなっていた。
本作は予告編からだと伝わりにくいが、『ツイン・ピークス』を彷彿とさせるダウナーな音楽からリミナルスペース的空間への遷移がテクニカルなので面白く観ることができた。











