【第38回東京国際映画祭】『ストレンジ・リヴァー』開空間に揺蕩う閉空間

ストレンジ・リヴァー(2025)
Strange River

監督:ジャウメ・クラレット・ムシャ―ト
出演:ジャン・モンテル、ナウシカ・ボニン、フランチェスコ・ヴェンツetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第38回東京国際映画祭ユース部門にて上映の『ストレンジ・リヴァー』を観た。

『ストレンジ・リヴァー』あらすじ

16歳のディダクは、夏のあいだ、家族とともにドナウ川沿いを自転車で旅している。その旅の途中、ディダクは川の中から現れたような謎めいた青年アレクサンダーと出会う。アレクサンダーの出現により、ディダクに初めて恋愛感情が芽生えるが、その一方で、家族との関係に微妙な緊張や亀裂が生じはじめる。少年期から青年期へと変わってゆく主人公の心の揺れが、16ミリフィルムを使った美しい映像の中に描かれた作品。フィルム独特の質感が、映画全体に夢のような雰囲気を与えている。また、自転車による移動が映画にひとつのリズムを与えている。スペインの新鋭ジャウメ・クラレット・ムシャートの鮮烈な監督デビュー作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。

※第38回東京国際映画祭より引用

開空間に揺蕩う閉空間

本作は明らかにアラン・ギロディ『湖の見知らぬ男』を意識したような部分があるが、構造自体は正反対である。『湖の見知らぬ男』は、ハッテン場という閉空間としての森に対し、他者からの干渉によって開空間を意識させることで人間関係と欲望の複雑な関係性を捉えた。

本作は川を移動する開空間の中に同性愛者の閉空間を揺蕩わせる。一緒に旅をしながらも内面には孤独や閉じた関係性があることを示唆している。このモチーフの手数自体は多く、現代建築の中でひとつの画の中、人間を分離させるようなこともやっている。

しかし、全体的に纏まりがなく雰囲気映画止まりに陥ったのは残念である。