『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』一本線すぎるRPG

映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ(2025)

監督:イワタナオミ
出演:井ノ原快彦、本上まなみ

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

サンエックスが誇る最強IP「すみっコぐらし」の劇場版4弾。最近、映画祭でアート映画ばかり観ていたので、すみっコに癒されに映画館へと向かった。

『映画 すみっコぐらし 空の王国とふたりのコ』あらすじ

サンエックスが展開する人気キャラクター「すみっコぐらし」を劇場アニメ化した「映画 すみっコぐらし」シリーズ第4弾。

すみっコの町では雨の日が続いており、揚げものコンビ「とんかつ」と「えびふらいのしっぽ」の体がじめじめになってしまう。そんなある日、空から突然誰かが落ちてくる。すみっコたちが心配して駆け寄ると、それは空の王国からやって来た「おうじ」だった。おうじによると、雲の上は深刻な水不足になっているという。雲の王国のピンチを救うため、すみっコたちはおうじとともに空へ向かい、大冒険を繰り広げる。

ナレーションを務めるのは、これまでのシリーズでもおなじみの井ノ原快彦と本上まなみ。3DCGアニメ「ピングー in ザ・シティ」「グレゴリーホラーショー」などのイワタナオミが監督を務め、劇団「ヨーロッパ企画」に所属する俳優・脚本家の角田貴志がシリーズ1作目と3作目に引き続き脚本を担当。

映画.comより引用

一本線すぎるRPG

ど平日に祭りを控える独自文化を有するすみっコ。しかし、梅雨のせいかここ10日近く雨が続いている。ほこりは水を吸ってかびへ豹変しすみっコたちに襲い掛かる。乾燥剤を使って闇堕ち解除に奮闘している。そんな中、空から王子様と下僕が落ちてきて、蜘蛛の王国を救うために宝石を探す旅に出る。

本作はRPGを意識した作品であり、すみっコたちは剣士、魔法使いといった属性を有し冒険に出る。しかし、ダメなキャラゲー、ダメなRPGにありがちなおつかいイベント一本線なシナリオとなっており、1時間尺でありながらかなりの退屈さを持っている。

また、本作はすみっコぐらしの本質を著しく棄損している致命的欠陥を抱えている。それはジェンダーレスな側面である。すみっコぐらしでは「とかげのおかあさん」以外、性別を定めないキャラクター設定となっている。一見すると女の子のように見えるえびふらいのしっぽのプロフィールも「かたいから食べ残された。とんかつとはこころつうじる友。」としか書かれていない。映画版も~ちゃん、~くんといった性差を意識させる呼称は排して個として向き合わせるようにしている。これこそが、すみっコぐらしの強みといえるコンセプトである。

しかし、本作では王子様、王様といった性差を意識させるキャラクターが登場する。セリフでも「兄弟みたいだ」といった感じである。つまり、すみっコたぐらしの特性をかき消してしまっているのである。故に解釈違いな作品であった。やはり、2024年に新キャラクターえびてんのしっぽを登場させ、推し活と結びつけたあたりから、サンエックスにブレが生じている気がするのである。
※映画.comより画像引用