波(2025)
原題:La ola
英題:The Wave
監督:セバスティアン・レリオ
出演:ダニエラ・ロペス、ロラ・ブラボ、アヴリル・アウロラ、Paulina Cortés etc
評価:100点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第38回東京国際映画祭にてセバスティアン・レリオ新作『波』を観た。本作は、2018年に起きたフェミニズム運動をベースとするミュージカルである。これが、想像を遥かに超える傑作であり、何故カンヌ国際映画祭のコンペティションに入らなかったのかと思うほどに凄まじい映画であった。
『波』あらすじ
2018年にチリの大学キャンパスで展開された、セクシャルハラスメントや男女差別を告発するフェミニスト運動を、パワフルなミュージカルとして描いた作品。音楽を学ぶ大学生のフリアは、大学でのハラスメントへの告発を取りまとめる証言委員会に加わる。同時に、フリアの心の中では、声楽教師の助手マックスと彼女自身との関係が本当に同意の上だったのか、という問いが渦巻いていた。やがて、運動のなかでフリアは自分自身の言葉を見つけ、声を上げる。女性たちの抗議行動がエネルギッシュな歌やダンスの形で表現され、見る者を圧倒する。これまでもマイノリティの問題を扱ってきたレリオの新境地と言えるだろう。カンヌ映画祭カンヌ・プレミア部門で上映。
※第38回東京国際映画祭サイトより引用
当事者だがスペクタクルの外側
芸術大学でフェミニズム運動が起こる中、ひとりの女学生が音楽科のリーダーに就任する。しかし、彼女はそこまで乗り気ではない。何故ならば、奨学金で通学しているため、この抗議運動への参加で奨学金を打ち切られたらマズいのだ。実際に彼女は、学校外では家業の商店を手伝っている。
そんな渦中、彼女はレイプされてしまう。その話はフェミニズム運動の起爆剤として同志を鼓舞することになる。
映画は彼女が騒動の渦中に入るほどにミュージカルの度合いを強めていく。しかし、運動の中心にいてリーダーとしての風格を体現しつつ、心にはトラウマと孤独、焦燥が渦巻き、気休めのガムが刹那の紛らわしとなる。
本作はスペクタクル批判としてミュージカルが効果的に使われている。バークレーショットを用いながらも全体としての模様を否定し、個々の有機的な結びつきが個と群の波を表現する。一方で個人の問題が群へ流れることで制御不能なスペクタクルとなり、当事者でありながら蚊帳の外にいるような状況が生まれる。それをミュージカルで示し、さらには本作自体がスペクタクルとして事象を消費してしまう危うさをも告発する。また、ミュージカルだからこそ描ける恐怖もあると本作は語る。それはトラウマを抱えた女性にとって男性がどう見えるかという観点である。嫌悪感ある気持ち悪い表情の群の開発、これにまた圧倒されるものがあった。
日本公開猛烈希望である。












