『善き谷の物語』ホセ・ルイス・ゲリンとしては……

善き谷の物語(2025)
Good Valley Stories

監督:ホセ・ルイス・ゲリン

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『シルビアのいる街で』や『影の列車 』などで知られるホセ・ルイス・ゲリン10年ぶりの長編映画。ホセ・ルイス・ゲリンといえば、空間に揺蕩う歴史性を扱うのに長けた監督であり、期待して観たのだが、私がその手の映画に慣れ過ぎてしまったせいなのか結果は芳しくなかった。

『善き谷の物語』あらすじ

バルセロナ郊外のバルボナ地区では、20 世紀半ばから移り住んできた住民の家族と、近年世界各地からやってくる新世代の移民たちが共に暮らしている。幹線道路や鉄道により周囲から隔てられ、開発から取り残されてきたこの町で、彼らは野菜や花を育て、歌い踊り、水路で禁じられた遊泳に興じる。住民たちと 3 年をかけて撮影した本作は、さまざまな人生や歴史の影を折り重ねるように反射させ、透過させながら変わり続ける世界の現在を果敢に映し出す。

※Filmarksより引用

ホセ・ルイス・ゲリンとしては……

本作は山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映される作品なのだが、YIDFFに何回か通っているとある種の傾向がある。それは、日記スタイル系の作品である。映像の質感を通じて、日記を捲るような物質感を観客に提示しし、異なる質感のイメージを並べることで歴史性を語るといったものだ。ホセ・ルイス・ゲリン自身、『影の列車』でメモワール・デュ・シネマといった概念を提示したわけだが、本作はいわゆる「エモい」感覚をまとった白黒映像と街並みを映す冒頭が終われば淡々とインタビューによる陳腐なモザイクを形成しているに留まってしまった。まだ観れていないが、時間の流れと場所を映画でもって地層のように魅せるアプローチはジャンフランコ・ロージに軍配があがりそうな気がする。

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