Wrong Husband(2025)
監督:ザカリアス・クヌク
出演:Theresia Kappianaq,Haiden Angutimarik,Leah Panimera etc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
イヌイットのイヌイットによるイヌイットのための映画を作り続けているザカリアス・クヌク監督新作は、『氷海の伝説』同様イヌイットの口承文学の映画化である。今回は、映像加工面に力を入れている作品であった。
『Wrong Husband』あらすじ
Igloolik, Nunavut, 2000 BCE. Teenage lovers Kaujak (Theresia Kappianaq) and Sapa (Haiden Angutimarik) were promised to each other at birth. After the sudden death of Kaujak’s father, her mother marries a man from another camp tearing the two apart. The promise of a better life quickly turns to a nightmare, with aggressive suitors backed by an evil shaman vying to win Kaujak’s hand. But Kaujak resists, holding on to hope that Sapa will one day make things right.
訳:紀元前2000年、ヌナブト準州イグルーリク。10代の恋人カウジャク(テレシア・カピアナク)とサパ(ハイデン・アングティマリク)は、生まれたときから互いに約束を交わしていた。しかし、カウジャクの父が突然亡くなり、母は別の部族の男と結婚し、二人は引き裂かれる。より良い生活への約束はたちまち悪夢へと変わり、邪悪なシャーマンに支えられた強引な求婚者たちがカウジャクの心を掴もうと競い合う。しかしカウジャクは、サパがいつかこの関係を修復してくれるという希望を抱き、抵抗する。
イヌイット口承文学の映画化
壮大な大地の距離のある空間が物語による時間圧縮で不思議な空気を醸し出すザカリアス・クヌク作品の刻印は健在である。今回は、イヌイット映画として映像演出への拘りを強めており、カウジャクの前に現れる邪悪なシャーマンの描写は、煙を用いた出現や紅に染まるフィルターの中で描かれている。アクションはイヌイット圏なため鈍重で、『Searchers』同様、生々しい殴り合いへと収斂していくのだが、この鈍重さをこの手のフィルターと時間の跳躍でカバーしている印象がある。とはいえ、オーソドックスな話過ぎて、彼の作品の中ではイマイチな方なのだが、そもそも本作の目的がイヌイット口承文学のアーカイブなのでそれを言うのはお門違いであろう。