海辺へ行く道(2025)
監督:横浜聡子
出演:原田琥之佑、麻生久美子、、高良健吾、唐田えりかetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
夜勤終わりに『8番出口』と迷いつつ開放的な色彩に惹かれて『海辺へ行く道』を観た。横浜聡子監督の作品なので、いつも通りゆるふわな映画だと思っていたのだが、衝撃を受けた。デヴィッド・クローネンバーグとかヨルゴス・ランティモスのような不穏な空気と独特な理論に覆われたタッチで全く持って一筋縄ではいかなかったのだ。この感覚は、現在放送中のあらゐけいいちのアニメ『CITY』に通じるものがある。こちらも、ゆるふわなタッチでありながら難解な理論が脈打ち、その中で陰謀論めいた物語が進行する。『海辺へ行く道』は三好銀の漫画を実写化したものだが、あらゐけいいちの世界の住人が具象化されたような気分にさせられた。
『海辺へ行く道』あらすじ
三好銀の人気漫画「海辺へ行く道」シリーズを、「俳優 亀岡拓次」「いとみち」の横浜聡子監督のメガホンで映画化。とある海辺の町を舞台に、ものづくりに夢中な子どもたちと秘密を抱えた大人たちが織り成す日々を通して、人生の幸福を陽気なユーモアと想像力で描いた人間讃歌。
瀬戸内海の海辺の町でのんきに暮らす14歳の美術部員・奏介。この町はアーティスト移住支援を掲げ、あやしげなアーティストたちが往来している。奏介とその仲間たちは、演劇部に依頼された絵を描いたり、新聞部の取材を手伝ったりと、忙しい夏休みを送っていた。そんな中、奏介たちにちょっと不思議な依頼が飛び込んでくる。
主人公・奏介役を「ルート29」「サバカン SABAKAN」の原田琥之佑が演じ、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽、菅原小春、諏訪敦彦、村上淳、宮藤官九郎、坂井真紀らが顔をそろえる。第75回ベルリン国際映画祭のジェネレーションKプラス部門に出品され、スペシャル・メンションを授与された。
アンダー・ザ・ブルー・リゾート
瀬戸内海のとある街。ここではアーティストの街として、定住者を呼び込んでいるらしい。子どもたちもまたアーティストとして創作活動に打ち込んでいる。しかし、次第にこの街の不気味な側面が浮かび上がってくる。少年は『スキャナーズ』のように超能力を操る。盆踊りが開催され、街中の人々が細道を練り歩きながら踊るのだが、笑みを魅せると失格となってしまう。介護施設に来た女は、暑い中老人たちに歌を歌わせている。それをスクープした少女は意図しない形でマスコミに情報が流出して悩む。美しい青に彩られた街の暗部が浮かび上がる。
本作は『アンダー・ザ・シルバーレイク』のように、美しい場所の中で張り巡らされた暗号がコミュニティ内外の闇を浮き彫りにさせる。観光客からしたら田舎は理想的な場に見える。よく細田守映画における美化された田舎描写が批判の対象となるのだが、本作はそれを逆手に取っているように思える。外部からしたらコミュニティでの活動は異質なものに見える。内部にいる者がそれに気づいたとしても、揉み消される。故に深層部は闇に包まれているのだ。本作は様々な小さなエピソードから構成されているのだが、本質は同じであることを少年が読んでいる岡崎乾二郎の本で象徴させているところが興味深い。夜勤明けで観るような映画ではなかったのだが、他で観ることのできない異物さに興奮はした。
※映画.comより画像引用