『Wild Diamond』フォロワーいっぱい、ココロはからっぽ

Wild Diamond(2024)
Diamant brut

監督:Agathe Riedinger
出演:Malou Khebizi、Idir Azougli、Andréa Bescond etc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2024年のカンヌ国際映画祭は『サブスタンス』『パルテノペ ナポリの宝石』『ANORA アノーラ』『私たちが光と想うすべて』などと、女性を主軸に観る/観られるの関係を描いた作品が多数コンペティション部門に選出されていた。Agathe Riedinger長編デビュー作『Wild Diamond』もまたその一本であった。

『Wild Diamond』あらすじ

Liane, 19, lives with her mother and sister in Fréjus in the south of France. Consumed by aspirations of beauty and stardom, she auditions for a reality show called “Miracle Island.”
訳:19歳のリアンヌは、南フランスのフレジュスで母と妹と暮らしている。美とスターダムへの憧れに燃える彼女は、「ミラクル・アイランド」というリアリティ番組のオーディションを受ける。

IMDbより引用

フォロワーいっぱい、ココロはからっぽ

19歳のリアンヌは妹と共に貧しい暮らしをしている。街行く人々に化粧品を転売し日銭を稼いでいる。母は毒親で、リアンヌを認めようとはしておらず、彼女の承認欲求はSNSへとぶつけられる。貧しいながらも美しくなりたい一心で、動画を撮る。確かにフォロワーは増えるが親密な関係になることはないし、母親は冷笑するように彼女の得たフォロワー数といった実績を蹴り飛ばす。本作は見えないフォロワー、アンドレア・アーノルド映画のような荒涼とした地/息苦しい空間の中でSNS社会における承認欲求の源流を汲み取る一本となっている。本作が興味深いのは中盤で粗暴な男から公共の場で暴力に近い振る舞いを長回しで提示する場面があるのだが、彼女はどこか嬉しそうにしている点にある。誰かに愛されることが彼女にとっての一番の幸せなため、暴力的な関係性であろうとも誰にも構ってもらえないよりかは遥かに嬉しいことがわかるのだ。とはいえ、昨今増えているインフルエンサーの闇を描いた作品はどうも予定調和なところがあり、実は映画よりも文学向けの題材なのかなと思った。撮影自体はグザヴィエ・ドランとアンドレア・アーノルドの中道を行く感じなので、今後の作品に期待したい。