モンスターの季節(1987)
Season of Monsters
監督:ヤンチョー・ミクローシュ
出演:ジョゼフ・マダラス、ギェルギ・ツセルハルミ、カタジーナ・フィグラ
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
新文芸坐でヤンチョー・ミクローシュ『モンスターの季節』が上映されたとのことだったので、後追いで鑑賞した。ヤンチョー・ミクローシュ十八番の長回しは健在だが、それ以上にゴダールに近い手法に驚かされた。
『モンスターの季節』あらすじ
Monsters season – a teacher celebrates his 60th birthday at a rural summer house. Existentialism and philosophy is discussed among professors and students. A scary mystery play opens.
訳:モンスターズ・シーズン – 田舎の別荘で60歳の誕生日を祝う教師。教授と生徒たちの間で実存主義と哲学が議論される。恐怖のミステリー劇が開幕する。
同期/非同期/爆発
ハンガリーに帰国した直後に自殺した亡命教授を軸に気が付けばハンガリーの荒野でひたすら爆破を魅せられる物語となっている。本作はゴダールの『パート2』と『ウイークエンド』を足し合わせたような作品となっており、映画には空間を用いた多層的な構造にテレビが挿入され、テレビモニタを用いた同期/非同期と演劇における現実と虚構の交わり、着陸/離陸の宙吊りで登場人物を追跡するヘリコプターによって形而上における現実との接点を模索するような作風となっている。
いつものことながら、ヤンチョー・ミクローシュは物語の背後に歴史や政治を背負っている気配を感じながらも観る者を圧倒する視覚的インパクトが強烈であり、本作の場合、鋼の錬金術師のスタング大佐さながら指パッチンで藁が燃え盛るスペクタクルに呆気に取られている間に映画が終わってしまった。
なんだったんだといった映画体験を与える監督、それがヤンチョー・ミクローシュなのである。