『F1®/エフワン』男はハンドルを握る、女は手綱を握る

F1®/エフワン(2025)

監督:ジョセフ・コシンスキー
出演:ブラッド・ピット、ダムゾン・イドリス、ケリー・コンドン、ハビエル・バルデム、トビアス・メンジーズetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

陸のトップガンと称される『F1®/エフワン』を観てきた。王道レース映画のプロットを踏襲しながらも新鮮な人間関係が描かれていた快作であった。

『F1®/エフワン』あらすじ

モータースポーツの最高峰である「F1(R)」に挑むレーサーたちの姿を、ブラッド・ピット主演で描いたエンタテインメント大作。監督のジョセフ・コシンスキー、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー、脚本のアーレン・クルーガーら「トップガン マーヴェリック」を手がけたスタッフが集い、F1(R)の全面協力を得て、グランプリ開催中の本物のサーキットコースを使って撮影を敢行。世界チャンピオンにも輝いた現役F1(R)ドライバーのルイス・ハミルトンもプロデューサーとして参加している。

かつて世界にその名をとどろかせた伝説的なカリスマF1(R)ドライバーのソニーは、最下位に沈むF1(R)チーム「エイペックス」の代表であり、かつてのチームメイトでもあるルーベンの誘いを受け、現役復帰を果たす。常識破りなソニーの振る舞いに、チームメイトである新人ドライバーのジョシュアやチームメンバーは困惑し、たびたび衝突を繰り返すが、次第にソニーの圧倒的な才能と実力に導かれていく。ソニーはチームとともに過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵を相手に命懸けで頂点を目指していく。

主人公ソニーをブラッド・ピットが演じ、ドラマ「スノーフォール」で注目を集め、プラダのブランドアンバサダーも務める若手俳優のダムソン・イドリスが、ソニーのチームメイトでルーキーF1(R)レーサーのジョシュア役を担当。チームを支えるピットクルーのリーダー、ケイト役を「イニシェリン島の精霊」のケリー・コンドン、ソニーをF1(R)の世界に呼び戻すチームの代表ルーベン役はハビエル・バルデムが務めた。

映画.comより引用

男はハンドルを握る、女は手綱を握る

本作を語る時、『フォードvsフェラーリ』や『フェラーリ』と比較したくなるだろう。しかし、最も近い作品はハワード・ホークス『レッドライン7000』である。『F1®/エフワン』最大の特徴は女性にフォーカスがあたっている点だ。通常、レース映画では男臭い世界が描かれるため、女性はレースの外側に配置されがちだ。しかし、本作ではエンジニアのケイトとジョシュアの母親がグイグイと物語の中心に入っていき、ソニー/ジョシュアの心を牛耳っていく存在となっている。それは単にメンタルケアの側面に留まらず、男の中の男である彼らを圧倒する程の弁で対等な関係性に持ってきている。まさしくハワード・ホークス映画における男社会の手綱を握っていく女性像そのものであり、実際『レッドライン7000』でも女性がレースの世界に介入していく。そして『レッドライン7000』ではミュージカル要素がアクセントとなっていたが、こちらでは西部劇をアクセントとしている。

ソニーは『荒野のストレンジャー』的流れ者であり、ヘラヘラ飄々としているものの、その素性は不明瞭であり、観客に提示されるトラウマのイメージが彼の抑圧しているものを説明しているだけで、チームメイトにはタブーとしてあまり共有されない。コミュニティにやってきた流離う人が役割を全うし、去っていく物語として描かれているのだ。役割のために団結し、プロジェクトが終わったらドライに解散するアプローチはまさしく役割を全うする映画に長けたアメリカならではのものといえよう。

つまり、純粋なアメリカ映画を堪能できる、それが『F1®/エフワン』なのだ。

※映画.comより画像引用