牯嶺街少年殺人事件(1991)
A Brighter Summer Day
監督:エドワード・ヤン
出演:チャン・チェン、チャン・クォチュー、リサ・ヤンetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
大学時代にTSUTAYA渋谷店で『牯嶺街少年殺人事件』のVHSを借りた。その時は、あまりに位画でよくわからない映画といったイメージが強かった。U-NEXTで4Kレストア・デジタルリマスター版が配信されているということで再観した。
『牯嶺街少年殺人事件』あらすじ
台湾の名匠エドワード・ヤンが手がけた青春群像劇。1991年の第4回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、ヤン監督の日本初公開作品として92年に劇場公開された。61年夏、14歳の少年が同い年のガールフレンドを殺害するという、台湾で初の未成年による殺人事件が起こる。不良少年同士の抗争、プレスリーに憧れる少年の夢、大陸に帰りたいと願う少年の親世代の焦りと不安を描きながら、当時の台湾の社会的・精神的背景を浮き彫りにしていく。主人公を演じるのは、当時まったくの素人だったチャン・チェン。上映時間が188分のバージョンと236分のバージョンが存在し、2016年の第29回東京国際映画祭ワールドフォーカス部門にて、デジタルリマスターされた236分のバージョンがプレミア上映。17年に同バージョンが劇場公開となる。※タイトルの「クー嶺街(クーリンチェ)」の「クー」は「牛」偏に「古」
※映画.comより引用
未遂と遂行の波
エドワード・ヤンの伝説的一本である『牯嶺街少年殺人事件』は、マーティン・スコセッシのワールド・シネマ・プロジェクトとクライテリオン社共同企画で4Kレストア・デジタルリマスター版が作られたことで、画面が暗くて観辛かったVHS時代を経験した者にとって新しい発見のある作品へと蘇った。
本作は小さな暴力の積み重ねによって構成されていく一本だ。暴力の遂行/未遂が交差することによって独特の緊迫感が生まれる。夜間学校でチンピラに追われる場面では、階段を駆け下りるも群れに挟まれ、逃げるように階段を上る過程でリンチされる。一方で、教室の扉から気配を感じ、窓から飛び降りるように逃げることで暴力から逃れる場面もある。常に暴力の気配がある中、実際にそれが行使されるとすぐに場面が転換する。4時間近い作品でありながらカット捌きはとても早く、事件を断片的に魅せることを徹底することで観る者の心をザワつかせる居心地の悪さがある。
この独特な空気感の中、終盤に少女が銃を誤射する場面がある。兵隊ごっこの中で彼女が銃を撃つ。銃弾が入っており、火花を散らす。ヒリつく間がそこに広がる。観客はフレームの外側にある死に関心が向く。カットが割られると、彼は生きていた。安堵の瞬間を与えるように見せかけてビンタが飛ぶのだ。この未遂に終わる暴力と遂行される暴力が凄惨な事件のアクセントとして機能しているといえよう。
※映画.comより画像引用