『訪問、あるいは記憶、そして告白』封印されしオリヴェイラ

訪問、あるいは記憶、そして告白(1982)
Visita ou Memórias e Confissões

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:マノエル・ド・オリヴェイラ、マリア・イザベル・デ・オリヴェイラ、ウルバノ・タベアズ・ロドリゲス、ディオゴ・ドリア、テレーザ・マドルーガetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で封印されしオリヴェイラ『訪問、あるいは記憶、そして告白』を観た。本作は1981年、自分の死後に公開するためのドキュメンタリーとして制作されたエッセイである。彼は知る由もなかった。オリヴェイラが注目されるのは、1981年以降であり、『フランシスカ』『カニバイシュ』『ノン、あるいは支配の空しい栄光』などでカイエ・デュ・シネマにて注目され、日本でも人気を博したのだ。

2014年に亡くなり、翌年に全世界で公開された本作はオリヴェイラのルームツアー映画であった。映画というよりかはオリヴェイラ研究本といった作品なのだが、興味深く観た。

『訪問、あるいは記憶、そして告白』概要

2015年に106歳で他界するまで現役最高齢の映画監督として活躍したポルトガルの名匠マノエル・ド・オリベイラが、1982年に手がけた自伝的ドキュメンタリー。

ポルトガル北部の都市ポルトに1942年に建てられてから約40年間オリベイラ監督が暮らした家を舞台に、家族について、そしてオリベイラ監督自身の人生についてたどる。「アブラハム渓谷」の原作者でもあるポルトガル文学の巨匠アグスティーナ・ベッサ=ルイスがテキストを担当。

オリベイラ監督が自身の死後に発表するようことづけていたため、彼が他界した2015年にポルト、リスボン、カンヌ国際映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭にて上映された。日本では、2025年4月開催の特集上映「オリヴェイラ2025 没後10年 マノエル・ド・オリヴェイラ特集」にて劇場初公開。

映画.comより引用

封印されしオリヴェイラ

オリヴェイラ作品は『アブラハム渓谷』をはじめとし、閉ざされた空間の中で物語を進める傾向がある。関係性や心理領域を明確にする舞台装置として機能している。その裏付けとなる部屋や家へのこだわりが彼の口から語られる。

また、1981年の時点で、『ノン、あるいは支配の空しい栄光』や『アンジェリカの微笑み』の構想はできあがっており、10年規模の視座で映画へ落とし込もうとしている忍耐力をも確認できる。

また、オリヴェイラは窓や肖像画、手紙などといった異なるメディアを重ねて歴史性に奥行きを持たせる演出が特徴となっているのだが、本作では今/昔のイメージを同じ画の中で重ね合わせることで、その奥行きを表現する技術が観測できる。

正直、映画としては面白くないものの、オリヴェイラを語る上では重要な一本であった。

※映画.comより画像引用