トラララ(2021)
Tralala
監督:アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー
出演:マチュー・アマルリック、ジョジアーヌ・バラスコ、メラニー・ティエリー、マイウェン、ベルトラン・べランetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
日仏学院で開催された「アラン・ギロディ&アルノー&ジャン=マリー・ラリユー特集 欲望の領域」にてラリユー兄弟の『トラララ』を観た。鬼才がミュージカル映画を撮ると奇天烈なものになりがちだが、本作も例に漏れることはなかった。ジャック・ドゥミのミュージカルやジャン・ルノワールを意識した本作は、コロナ禍の撮影も相まって奇妙な作品に仕上がっていた。
『トラララ』あらすじ
パリの街角で歌手をしている40代のトラララは街である夜、美しい若い女性に出会う。 彼女は彼にひとつの言葉を残し去っていく。「とにかく、自分自身であることをやめること」。パリを離れルルドに到着したトラララはひとりの女性から、20年前にアメリカで行方不明になった自分の息子だと勘違いされその “役” を引き受けることに。『素晴らしき放浪者』を思わせるマチュー・アマルリックがバンジョーで謳いながらコロナ禍のフランスを放浪する。
コロナ禍における距離感と踊りについて
工事によって追い出されたホームレスのトラララは、ストリートミュージシャンとして小銭を稼ごうとするが誰も聴いてはくれない。そんな彼の前に女性が現れ、彼女の面影を頼りにルルドへと向かう。
前半パートはコロナ禍において他者との間に距離ができてしまった状況を空間にて表象する。マチュー・アマルリック演じるトラララは街中で歌っているのだが、町ゆく人々はかれに気づかないかのように避けて歩いている。正直、ミュージカル映画としては中途半端に歌っては止まってを繰り返す様やホームレスなのに綺麗すぎる服装がノイズとなってしまっている。
しかし、ルルドへ着いてから段々とボルテージが上がっていく。ドニ・ラヴァンのアニメのようなぐにゃぐにゃとした動きに誘われ、家族という空間へ侵入していき、親密さが生まれていく。それと同時に群衆が一体となって空間を作り始めるのだ。それが最高潮に達するクラブの場面では20分近いグルーヴの中でトラララの心がかき乱されていき、アクションへと繋がってくる。ここで、前半のイマイチなアクションが効果的なものであったことに気づかされるのである。
特集でラリユー兄弟の作品を3本観たのだが、どれも一筋縄ではいかず、面白い知見と出会い満足であった。