基礎訓練(1971)
Basic Training
監督:フレデリック・ワイズマン
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
フレデリック・ワイズマン有休を取得してアテネ・フランセに足を運び『基礎訓練』『シナイ半島監視団』『ミサイル』を観た。『基礎訓練』が想像以上に牧歌的でユニークな作品であった。
『基礎訓練』概要
ケンタッキー州フォートノックスの基地で行われる新兵を育成するための基礎訓練の様子を描く。行進や格闘、射撃や銃の使い方を学ぶ教練、生活指導、イデオロギー教育やカウンセリング等々を通して、まだ子どもっぽさの抜けない若者が兵士に仕立て上げられていく。ベトナム戦争の最中に撮影された。
※アテネ・フランセより引用
軍人スピリチュアルを『パットン大戦車軍団』に重ね
フレデリック・ワイズマンの映画といえば、役割を淡々と遂行していく様を捉えるドライな撮影のイメージが強い。しかし、本作では役割から逸脱しようとする者を明確に捉えていく。迷惑をかけて懲罰房行きとなったなった黒人兵士が、上官に「もう、誰にも迷惑かけたくないから留置所に入れてくれ」と懇願する。上官は役割に従った判断しかできないので、なだめようとする。「職歴にも載るぞ」と。しかし、頑固として自分の意志を貫く彼に対し、終いには「みんな迷惑しているんだ」と上官は言い放つ。別の場面では、軍法会議になってキャリアにキズがつくといっても、転職の面接でバレないのではといった議論が行われる。組織に対する反発の正当化が生々しく捉えられるのである。
その部分以外は想像以上に牧歌的であり、『フルメタル・ジャケット』や自衛隊、ブラック企業研修のようなヤバさは見えてこない。アメリカ軍を美化しているからか?と少しは思ったのだが、では日本のテレビでブラック企業の宗教染みた研修が放送されているのを知っているので、多分異様なことが行われていてもありのまま撮影させてくれるのではと考えられる。だからかなり等身大のアメリカ軍像といえる。訓練もリズム天国みたいに、リズミカルな行進をし笑い始める場面があり実に長閑である。
そんな中、注目したのは「カルマを信じる軍人」の話だ。その話を飲み込むために、『パットン大戦車軍団』と重ね合わせ「彼は前世から運命の人を分かっていた」と語り始める部分は、どこか気持ち悪いところがあって面白かった。