『ドリラー・キラー』ドリルで社会と繋がる世界

ドリル・キラー(1979)
DRILLER KILLER

監督:アベル・フェラーラ
出演:キャロリン・マーズ、アベル・フェラーラ、リチャード・ホワース、ベイビ・デイetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アベル・フェラーラ作品は好きなのだが、意外と有名どころの『ドリル・キラー』は未観だったのでU-NEXTにて鑑賞した。

『ドリラー・キラー』あらすじ

「スネーク・アイズ」や「バッド・ルーテナント」で、今や現代ニューヨーク派の代表格となったA・フェラーラの初期作品で、マンハッタンを舞台に繰り広げられる殺人模様を描いたスプラッター・ホラー。売れない画家で堕落した生活を送っている主人公の男は、ホラー本に没頭するうちに現実ともつかぬ狂気の世界にのめり込んでゆき、やがてドリル片手に猟奇的殺人を繰り返すようになる……。

ドリルで社会と繋がる世界

アベル・フェラーラといえば信仰を失った世界としての都市像に執着している監督ではあるが、本作も冒頭から彼の刻印が確認できる。教会へ現れた男が、狼狽するように女を連れて飛び出すのである。

売れない画家である彼が社会と希薄な関係性にあることを、バンドの群れと孤独な彼の対比構造で描いていく。彼はやがてドリルに取りつかれて殺人を犯すようになる。ドリルは銃の形をしているが、ナイフのように肉体と密着した状態で使用し、直接的な殺戮をもたらす。

つまり、神にもすがりつけず、都市との関係性も持てない彼が殺人でもって関係を結ぶ痛ましさが本作で描かれているのだ。それは、現実における「無敵の人」の心理とも繋がるところがあり、慧眼な視点であった。