『悪魔と夜ふかし』ハッタリとガチの宙づりについて

悪魔と夜ふかし(2023)
Late Night with the Devil

監督:キャメロン・ケアンズ、コリン・ケアンズ
出演:デヴィッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、イアン・ブリス、フェイザル・バジetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カイエ・デュ・シネマベスト2024の調査をしていたところ、『悪魔と夜ふかし』をベストに挙げている選者がいた。ホラー映画とのことで、公開当時スルーしてしまったのだが、U-NEXTにて配信されていたので観た。これが傑作であった。

『悪魔と夜ふかし』あらすじ

テレビ番組の生放送中に起きた怪異を、ファウンドフッテージ形式で描いたオーストラリア製ホラー。

1977年、ハロウィンの夜。放送局UBCの深夜のトークバラエティ番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャックは、生放送のオカルトライブショーで人気低迷を打開しようとしていた。霊聴やポルターガイストなど怪しげな超常現象が次々と披露されるなか、この日のメインゲストとして、ルポルタージュ「悪魔との対話」の著者の著者ジューン博士と本のモデルとなった悪魔憑きの少女リリーが登場。視聴率獲得のためには手段を選ばないジャックは、テレビ史上初となる“悪魔の生出演”を実現させようともくろむが、番組がクライマックスを迎えたとき思わぬ惨劇が起こる。

「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」のデビッド・ダストマルチャンが司会者ジャックを怪演。「モーガン・ブラザーズ」のコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟監督が、1970〜80年代の名作ホラーへのオマージュを盛り込みながら、クールでレトロな映像とリアルな演出で描き出す。

※映画.comより引用

ハッタリとガチの宙づりについて

本作は、1977年、ハロウィンの夜。放送局UBCの深夜のトークバラエティ番組「ナイト・オウルズ」の消失した収録映像が出土したので観てみるといったいわゆるファウンド・フッテージもの、モキュメンタリーなのだが、その構成の鮮やかさに魅了される。

まず、「ナイト・オウルズ」とはどういったものなのかを『マグノリア』さながら饒舌な語りとフッテージの編み込みで語りぬけていく。司会者ジャックはとんとん調子でテレビ業界の頂点へ上り詰めていくものの、あと一歩のところでナンバーワンになれず、ズルズルと凋落していく。と同時にカルト集団との関係性が示唆されたところで、幻の放送が始まる。

モキュメンタリーなので虚構という作り物であることは明白なのだが、本作は生放送における緊迫感をキーとし、ハッタリとガチの宙吊りを形成していく。そのバランス感覚の良さによって、映画がもたらす虚構の世界に没入することとなる。

オープニングでは、扉が開く。しかし、ジャックが現れない。狼狽する相方。放送事故かと思うと後ろからばぁと彼が現れる。最初の超能力者が現れ、客席にいる初めてあったはずの人の悲しき過去をズバリと当てていく。だが、あれだけ意気揚々と超能力を披露していた男が、苦しみ始める。これは台本通りのパフォーマンスかガチかといった疑惑を、ハッタリ見破り師を介して見定めていく。超能力者はその後も体調が悪くなり、終いにはどす黒い嘔吐をぶちまける。これも演出だろうと思っていたら、彼はそのまま亡くなってしまうのである。

そうなってくると、この空間はガチの呪術的ものが渦巻く場であることを受け入れざる得ないのだが、ゲストに現れる超能力者たちがコントロールできている部分もあり、ガチだと思ったらハッタリ、もとい彼ら/彼女らがコントロールできているオカルトな面であったりするので最後まで油断できない。

この、ガチ、ハッタリ(制御されたガチ)の反復横跳びが最後まで失速することなく駆け抜けていくのでサクッと観られる大傑作として一押しの作品となった。
※映画.comより画像引用