【ネタバレ】『プレゼンス 存在』全編幽霊視点の映画観た

プレゼンス 存在(2024)
Presence

監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ルーシー・リュー、クリス・サリバン、カリナ・リャン、ジュリア・フォックスetc

評価:60点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

スティーヴン・ソダーバーグ新作が全編幽霊目線ということで話題となっている。幽霊視点の映画といえばデヴィッド・ロウリー『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー 』が記憶に新しいが、本作は幽霊映画というよりかは『アンセイン 〜狂気の真実〜』にてiPhone撮影に手応えを感じたソダーバーグが、今の撮影技術でもって『セックスと嘘とビデオテープ』をリメイクした内容といった方が正確だと思われる。実際、本作は駆け出し監督が一発逆転を狙って作ったようなワンコンセプトものであり、ネタ自体は少なく、本作について少し語ったところですべてのネタバレを言ってしまうこととなる一本だ。しかし、その中にも職人業を感じる部分があったので語っていく。

『プレゼンス 存在』あらすじ

「トラフィック」や「オーシャンズ」シリーズ、「コンテイジョン」で知られるスティーブン・ソダーバーグ監督が、ある屋敷に引っ越してきた一家に起こる不可解な出来事を、全編を通して幽霊目線で描いた新感覚のホラー。

崩壊寸前の4人家族が、ある大きな屋敷に引っ越してくる。一家の10代の少女クロエは、家の中に自分たち以外の何かが存在しているように感じられてならなかった。“それ”は一家が引っ越してくる前からそこにいて、“それ”は人に見られたくない家族の秘密を目撃する。クロエは母親にも兄も好かれておらず、そんな彼女に“それ”は親近感を抱く。一家とともに過ごしていくうちに、“それ”は目的を果たすために行動に出る。

「キル・ビル」「チャーリーズ・エンジェル」のルーシー・リューが息子を溺愛する一家の母親レベッカを演じ、父親クリス役は「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のクリス・サリバン、物語のキーマンとなる娘クロエ役はカナダ出身の新鋭カリーナ・リャンがそれぞれ務めた。脚本は「ジュラシック・パーク」「ミッション:インポッシブル」などハリウッドの話題作を数々手がけてきたデビッド・コープ。

映画.comより引用

全編幽霊視点の映画観た

がらんとした家の中を彷徨う。魚眼レンズのように歪んだ視野。FPSゲームさながらの物理世界とは異なるような滑らかすぎる視点の動きがこの家の全体を捉えていく。

やがて、そこに一家が現れる。映画は幽霊の視点から家族の肖像を捉えていくのだが、この家族は崩壊していることに気づかされる。対話不全を引き起こしている。原因は娘のようであり、同級生が亡くなり内に閉じこもっているらしい。

本作は駆け出しの映画監督では表現できないような空間が実装されている。それはオブジェクト(物体)はあるのにライフ(生活)がない空間にレイヤー(層)を設けているところである。この家は、まるでシミュレーションゲームのようにオブジェクトが配置されており、まさしくゲームさながら手が映らずオブジェクトだけが異動する様が提示される。部屋は広く、果物や書類、本などが置かれているのだが、そこには「ただ置かれている」事実があるだけで、生活の痕跡が確認し辛いものとなっている。一方で、息子と娘の部屋だけが生活感ある散らかり方をしており、親と子の間の気持ちの断絶。特に、娘が内なる世界へ引き篭もっている様を空間で表現していく。

その上で、兄の友人が現れるのだが、家族の知らないところで娘とセックスを行っており、やがて薬を使ったレイプへと発展していく。幽霊は、まさしくその男にレイプで殺された女であり、どうにかして助け出そうとする。

鬱病でカウンセリングを受けている者がおとこに惹かれるも、彼の家に行くとトンデモナイ男だと気づかされる長編デビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』と構図自体は同じとなっていて、こちらは男の領域でヤバさが露見するのに対し、『プレゼンス 存在』では女の心理的領域を男がジワジワ犯していくことによりヤバさが露見することとなっている。この点は興味深く観たものの、全体的にトピックが幽霊目線、レイプの2つしかなくその掘り下げ自体が希薄なので、幽霊のように薄っぺらい映画だったといえる。

※映画.comより画像引用