『Rumours』G7サミット開いたら巨大な脳とエンカウント

Rumours(2024)

監督:ガイ・マディン、ジョンソン兄弟
出演:ケイト・ブランシェット、ロイ・デュプイ、ニキ・アムカ=バード、チャールズ・ダンス、平岳大、ドゥニ・メノーシェ、アリシア・ヴィキャンデルetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ガイ・マディン&ジョンソン兄弟の新作『Rumours』のブルーレイを入手したので観た。ガイ・マディンは教え子であるジョンソン兄弟と制作した『The Forbidden Room』以降、ハーバード大学の教授に就任してしまい、長らく長編劇映画を撮ることができなかった。生活のために教員をやり、合間に過去の縮小再生産的短編を撮っており完全にスランプだったと語っている。そんな彼が製作総指揮アリ・アスター、割と潤沢な予算で映画を作ることができた。彼自身、過去の呪縛から逃れようとしており、本作は満足いく出来だと語る一方でガイ・マディンファンからすれば複雑な気持ちになる一本であった。

『Rumours』あらすじ

The leaders of seven wealthy democracies get lost in the woods while drafting a statement on a global crisis, facing danger as they attempt to find their way out.
訳:7 つの裕福な民主主義国の指導者たちは、世界的危機に関する声明を起草中に森の中で迷子になり、脱出方法を見つけようとしながら危険に直面する。

IMDbより引用

G7サミット開いたら巨大な脳とエンカウント

本作は、カンタン・デュピューやリューベン・オストルンドが撮ったような風刺劇となっている。G7サミットが開催され「国際的危機」に関する文書を練っているのだが、全員がフワッとしたことしか語っておらず、どんな危機が迫っているのか良く分からない。そして、各国首脳は国民性を象徴するような振る舞いをしており、平岳大演じる日本の首相は、全く会話に入れず、いざ話を振られるとどや顔で英語を使いこなしているアピールをしているが議論に何も影響を与えていない無となっている滑稽さがある。中盤以降には、狼狽から全く英語が使いこなせなくなってくるので爆笑と共に悲しくなってくる。

G7サミットに盛り上がっていると、気が付けばあたり一面紫の空間となっており、部下が消滅してしまっている。これはマズいぞとG7のメンツで冒険が始まる。ここでの空間「森」の扱いに興味深いものがある。通常、国家と社会が分断された状態で政治が行われる際に屋敷が用いられる。最近だと『ベルサイユのばら』における井の中の蛙なマリー・アントワネットと洛中洛外を行き来するオスカルを対比させ、フランス国家の盲目さをあぶりだしている。『Rumours』の場合、森の中で大冒険を繰り広げている。つまり役割を全うしているようで、その実態は虚無である側面を森に託しているのが面白い。森には巨大な脳やゾンビのような存在があり、RPGさながらとなっているのだが、最終結論として出る文書があまりにもくだらないものとなっている。

ただ、ガイ・マディンでそれをやるならリューベン・オストルンドの方が面白いのではと思ってしまう気持ちもあり複雑である。日本公開しますかね?