グッド・ワン(2024)
Good One
監督:インディア・ドナルドソン
出演:リリー・コリアス、ジェームズ・レグロス、ダニー・マッカーシーetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
カンヌ監督週間 in TOKIO 2024にて『グッド・ワン』を観た。ケリー・ライカート『オールド・ジョイ』を彷彿させるマイナスイオン漂う苦き一本であり、インディア・ドナルドソン監督に期待が高まった。
『グッド・ワン』あらすじ
17歳の少女が父とその友人との山登りに付き合う。山の経験のある父娘は、不慣れな友人をからかいながら、3人で和やかに自然を楽しむ。しかし少女は次第に大人とのずれを意識していく…。些細だが軽はずみな言動によって揺れていくティーンの繊細な内面を丁寧に掬い上げ、ナチュラルなタッチが抜群のセンスを感じさせるドナルドソン監督の長編デビュー作。「良い子」のイメージを押し付けられる少女を鮮やかに演じた主演のリリー・コリアスにも注目。
傷を舐め合う男の対象とは?
サムは父と友人に連れられ、ゆるキャンに繰り出す。美しい森林、そして川を繊細なライティング色彩調整で捉え、家族や仕事、人生に悩める男たちは束の間の癒しを謳歌する。ただ、スマホによる連絡や雑念がノイズとなりほろ苦い空気が隙あらば侵入してくる。
そんな中、「グッド・ワン(=いい子)」であろうとするサムは、傷を舐め合う男たちのためにテントを立てたり、飯を作ったりする。本当はあまり気乗りじゃないし、モヤモヤする旅。でも我慢して父に尽くそうとするのだ。
そんな中、父の友人に「寝よう」と一線を超えたセクハラを受けそうになる。父にそれを話すのだが、手ごたえがなくショックを受けて一人で旅を続ける。あまりにもグロテスクな展開だが、映画は爆発することなく、親密な一手を投じる。これは解釈が分かれるところであるが、彼女を「グッド・ワン」に留めるための一手に感じた。しかし、いくらその段階で父がこっそり理解を示した(=彼女の怒りを受け止めた)とはいえ、時すでに遅しだろう。
この手遅れな肌触りも『オールド・ジョイ』に近いものがある。