『不正義の果て』アイヒマンは決して凡庸な悪なんかじゃない

不正義の果て(2013)
Le dernier des injustes

監督:クロード・ランズマン

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

クロード・ランズマンのDVD-BOXがプレミアついており、10万円ぐらいする。6万円ぐらいで売っているのがあったので買った。お目当ては『不正義の果て』である。かつてはマーメイド・フィルムのサブスクにて配信さてれいたのだが、サブスクが終わってしまったので日本語字幕で観ることが困難な作品であった。実際に観てみると、これまた強烈な内容であった。

『不正義の果て』あらすじ

ホロコーストの真実を追究した「SHOAH ショア」のクロード・ランズマン監督が、ナチスのプロパガンダ映像や撮影監督ウィリアム・ リュプチャンスキー、キャロリーヌ・シャンプティエによる映像などを使用し、ナチス親衛隊アドルフ・アイヒマンの知られざる性格面を白日の下にさらしたドキュメンタリー作品。アドルフ・アイヒマンが世界を欺くために選んだ模範収容所テレージエンシュタット。この収容所の真の姿が、収容所の生還者であるユダヤ人長老ベンヤミン・ムルメルシュタインの証言から明らかになる。

映画.comより引用

アイヒマンは決して凡庸な悪なんかじゃない

クロード・ランズマンは過去のフッテージを使わず、インタビュー勝負でホロコーストの凄惨さを描くイメージがあるのだが、この番外編はホロコーストを扱った絵や映像を少しばかり挿入しているのが意外だ。それが若干ノイズに感じるも、ベンヤミン・ムルメルシュタインが語り始めると怒涛のように新しい理論が出てくる。ハンナ・アーレントがアイヒマンの行動を「凡庸の悪」と定義したが、実際のところかなり汚職していると語っている。また、ゲットーへの引越し手続きを3日で終わらせた話から、当時のシステム化、ブラック企業化した運用が語られていく。それを飄々と語っていくベンヤミンの言葉を一言も逃さぬように捉えていくクロード・ランズマンの執念が全編に渡ってひしひしと伝わってきたのであった。