【第25回東京フィルメックス】『ハッピー・ホリデーズ』ラスト30秒だけ映画的なことされても

ハッピー・ホリデーズ(2024)
Happy Holidays

監督:スカンダル・コプティ
出演:Manar Shehab,Wafaa Aoun,Merav Mamorsky,Toufic Danial etc

評価:20点

おはようございます、チェ・ブンブンです。
第25回東京フィルメックスにてパレスチナ映画『ハッピー・ホリデーズ』が上映された。本作はヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を受賞した作品となっている。近年、カンヌ国際映画祭監督週間と並びオリゾンティ部門は掘り出し物が多いので観たわけだがこれが困った映画であった。

『ハッピー・ホリデーズ』あらすじ

イスラエルのハイファに住む、あるパレスチナ人家族の物語。作品は4つの章に分かれており、それぞれの章が家族内の別の人物を中心に展開し、それぞれが相互に絡み合う構成になっている。国家や社会や文化がどのように強制的な支配を及ぼし、その圧力がどのように個人の人生を変え、破壊するのかについての一連のヴァリエーションにもなっており、一つの家族(あるいは拡大家族)の置かれている状況や人間関係の考察を通じて、イスラエルにおけるパレスチナ人とイスラエル人の分断状況や、軍国主義、あるいは女性に対する家父長主義的な制約といった民族や国家やジェンダーをめぐる深い文化的・政治的な背景が露わにされていく。2009年にイスラエル人監督ヤロン・シャニとの共同監督作品「Ajami」でカンヌ映画祭のカメラドールのスペシャル・メンションを獲得したパレステチ人監督スカンダル・コプティの2作目の長編作品(単独監督作としては1作目)。本作はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映され、同部門で最優秀脚本賞を受賞した。

※第25回東京フィルメックスより引用

ラスト30秒だけ映画的なことされても

本作はイスラエルに住むパレスチナ人家族の肖像を章ごと、別の人物目線で語った作品である。女に中絶させようと躍起になる男や鬱病と診断されることで兵役を免れようとする女などの物語を通じ、イスラエル・パレスチナ問題と家父長制問題を紐解く点で『ガリレアの婚礼』に通じるものがある。

しかし、本作はクローズアップのショットが9割を占め、それぞれのエピソードが陳列されているだけのように思えるので、「小説でいいじゃん」と思ってしまう致命的な欠陥を抱えた作品となっている。『ガリレアの婚礼』のように3つの視点が結婚式の高揚感の中で編み込まれるような感じではないのだ。

ラスト30秒だけアンゲロプロス『霧の中の風景』を彷彿とさせる制止した人を追い抜くように駆け抜けていく女の姿がアリ、文化によって停滞した人間を乗り越えていく様を象徴させる映画的ショットとなっているのだが、時すでに遅しといった感じで全く合わなかった。