【第25回東京フィルメックス】『空室の女』物語の外側で

空室の女(2024)
原題:空房间里的女人
英題:Some Rain Must Fall

監督:チウ・ヤン
出演:Yu Aier、Di Shike、Wei Yibo etc

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第25回東京フィルメックスでヴィジュアルが印象的な『空室の女』を観た。今年のフィルメックスの閉塞感ものと相性が悪く、本作もショットは良いもののイマイチはまらないものであった。

『空室の女』あらすじ

40代の主婦、ツァイは人生の目的を失い、大きな精神的崩壊の瀬戸際にいる。映画の冒頭で、彼女は不運な形で年配の女性に怪我を負わせてしまい、入院したその女性の家族から賠償を求められる。この出来事を導入として、私たちは彼女の置かれている状況を目にしていく。夫とは離婚手続き中で、反抗期の娘との間にも深い溝がある。同居中の義母はどうやら認知症を患っており、疎遠になって久しい実父は死期が近いようだ。彼女は、自分の上にのしかかる重荷や憂鬱から逃れようともがいている。この作品は、こうしたツァイの「中年の危機」的状況、ひいては中国の中流階級家庭の機能不全を、4:3の息苦しいフレーミングと撮影監督のコンスタンツェ・シュミットによる美しく憂鬱なイメージによって極めて効果的に語る。映画初出演だという主演のユウ・アイアルの抑えた演技も素晴らしい。カンヌ映画祭の短編部門でパルムドールを受賞した「A Gentle Night」(17)等、一連の短編作品で高い評価を得てきた新鋭チウ・ヤンの長編デビュー作。ベルリン映画祭エンカウンターズ部門で初上映された。

物語の外側で

『空室の女』はいわゆる不幸陳列罪的作品だ。年配の女性にケガを負わせてしまい賠償金を求められ、娘との間には深い溝がある。ひたすら不幸に追い込んでいく特徴がある。

本作はショットにこだわりがあり、基本的に事件を直接見せることはない。緑のライティングで観客の視線の導線を作りつつ、物語の外側に追いやられた中年女性の肖像を捉え続けているのである。

最後の最後まで不幸をフルスロットルで投入していくわけだが、ヴィジュアルが面白いだけの作品に留まってしまったように思える。