『夜明けまでバス停で』不幸陳列罪一歩手前で

夜明けまでバス停で(2022)

監督:高橋伴明
出演:板谷由夏、大西礼芳、三浦貴大、松浦祐也etc

評価:20点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

通勤中に、何気なく観逃していた『夜明けまでバス停で』を観たのだが、なんで観てしまったのかと思うぐらいによくない映画であった。

『夜明けまでバス停で』あらすじ

「痛くない死に方」「禅 ZEN」などの高橋伴明監督が板谷由夏を主演に迎え、バス停で寝泊まりするホームレスにならざるを得なかった女性を主人公に、社会的孤立を描いたドラマ。昼間はアトリエで自作アクセサリーを販売し、夜は焼き鳥屋で住み込みのパートとして働く北林三知子。しかし突然訪れたコロナ禍により、仕事も住む家も失ってしまう。新しい仕事は見つからず、ファミレスや漫画喫茶も閉まっている。行き場をなくした彼女がたどり着いたのは、街灯の下にポツリとたたずむバス停だった。誰にも弱みを見せられないままホームレスとなった三知子は、公園で古参ホームレスのバクダンと出会う。一方、三知子が働いていた焼き鳥屋の店長・寺島千晴は、コロナ禍の厳しい現実と従業員との板挟みになり、恋人であるマネージャー・大河原智のパワハラやセクハラにも悩まされていた。

映画.comより引用

不幸陳列罪一歩手前で

「不幸陳列罪」映画というジャンルがある。不幸だけを回転ずしのように並べているだけで、不幸を通じた人間の複雑な感情に迫れず、表層的な共感や同情で成り立っている映画のことを示す。仄暗いタッチ一辺倒、チープな作りでありながら、題材が題材なので苦言を呈しにくいだけに質が悪い。それだけに私はこの手の映画を最近は嫌悪している。

『夜明けまでバス停で』は確かにコロナ禍数年の空気感の表象として小説以上に重要な役割を担っている。とりあえずの鼻マスクで飲み会騒ぎしている様、Go to Eat、緊急事態宣言に、東京五輪への期待と不安。静かに、強烈に社会を覆いつくす厭世観を捉えようとした作品として評価できるのかもしれない。しかしながら、おばちゃんたちが居酒屋のシフトを減らされた挙句、クビとなってホームレスとして街を彷徨う様、ネットカフェ難民にすらなれない様子、セクハラ問題がただ平坦に並べられているだけで、その複合的不幸によって増幅される感情が予想の域を出ない。表層に留まってしまっているのだ。

一応、本作はこの手の閉塞感ものにありがちな仄暗いライティングを回避しようとしている工夫があったり、なんといってもラスト10分で映画的ショットを交えた展開へと転がすので、完全たる「不幸陳列罪」にはなっていない。

だが、悲しいかな、本作の虚構的救いの良心に対して、現実は悪意あるスペクタクルがこの映画の前に発生してしまっている。映画における虚構性が現実を下回ってしまう2020年代も含めて暗い気持ちになった。
※映画.comより画像引用

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