『赤いシュート』ちょっと記憶喪失プールへ迷い込む

赤いシュート(1989)
PALOMBELLA ROSSA

監督:ナンニ・モレッティ
出演:ナンニ・モレッティ、シルヴィオ・オルランド、マリエラ・ヴァレンティニetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

東京国際映画祭のナンニ・モレッティ特集で上映される作品。ナンニ・モレッティ映画ってイマイチよく分からないのだが、本作は『ローマ法王の休日』のルーツともいえる作品で興味深かった。

『赤いシュート』あらすじ

イタリア共産党の若き指導者で、名門水球チームの選手でもあるミケーレ・アピチェッラ(ナンニ・モレッティ)は、シチリアで開催される水球選手権試合に出場するため、車を走らせている途中交通事故に遭い、軽い記憶喪失に陥ってしまう。子供の頃の記憶以外は不鮮明な認識しかない状態のミケーレに、水球試合の行われているプールで多くの人物が一方的に語りかけてくる。共産党の路線変更について質問する女性記者(マリエッラ・ヴァレンティーニ)、学生運動を回想する友人、カトリックの神学者、そして感情をむき出しにするチームのコーチ(シルヴィオ・オルランド)…。ミケーレのチームが劣勢のまま試合は進む。場内のカフェテリアのテレビでは「ドクトル・ジバゴ」が放映されている。次第に記憶が蘇ってくるミケーレ。テレビの政治討論会、学生運動家としての若き日々、そして優しかった母親…。テレビの映画が終わりに近づくと、場内すべての人々がテレビの前に集まってくる。皆が見守る中、悲劇的なラストを迎えるが、劇中のジバゴに気づかないララに向かって「気づけ!」と叫ぶミケーレ。映画が終わって再開された試合は白熱し、チームの勝敗を決するファウル・シュートがミケーレに託される。左右どちらを狙うか迷うミケーレは、シュートを放つ瞬間に気が変わり、結局失敗する。試合の後すべての記憶を取り戻し、娘ヴァレンティーナ(アーシア・アルジェント)と帰途につくミケーレだったが、再び事故に遭い2人の乗った車は横転する。集まってきた人々と、車から出てきた2人の背後にハリボテの太陽が昇る。その太陽をつかもうとするかのように手を伸ばす人々の中に、幼年時代のミケーレの姿があった。

映画.comより引用

ちょっと記憶喪失プールへ迷い込む

車の中で変顔をしている共産党指導者兼水球選手が交通事故に遭い、うっすら記憶喪失になる。しかし、彼は重要人物なので、右から左から人がやってきて、水球の試合へと連れていかれる。

本作は、ナンニ・モレッティにしては珍しくバキバキに決まったショットを畳みかける仕組みとなっている。迷える主人公を象徴するように、広告が浮かぶプールの中でぽつんと立ち尽くす彼を捉えたり、記憶喪失により自分の人生を振り返る様を示すようスローモーションでボールのフェイントが阻止される様を描いたりしている。

そして映画は2重の外しによって面白くさせていく。通常、この手の映画の場合、水球の試合をクライマックスに持っていくはずなのだが、何故か映画の応援上映、そして完璧な交通事故を畳み込むことでクロージングへ持っていくのである。ナンニ・モレッティ映画にしてはかなり面白い作品であった。

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