ALLÉGORIE CITADINE(2024)
監督:アリーチェ・ロルヴァケル、JR
出演:Lyna Khoudri、Naïm El Kaldaoui、レオス・カラックスetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
アリーチェ・ロルヴァケル監督が『顔たち、ところどころ』のアーティストJRと組んだ短編映画が観られるとのことで、Festival Scopeから視聴した。アリーチェ・ロルヴァケルといえば、長尺でマジックリアリズムたる世界を描くのに長けた監督だと思っていたのだが、短編での切れ味も抜群であった。
『ALLÉGORIE CITADINE』あらすじ
In the Allegory of the Cave, Plato ponders: what would happen if one of the prisoners managed to free themselves from their chains and escape from the cave? What if that prisoner were Jay, a little 7-year-old boy?
訳:『ALLÉGORIE CITADINE』の中で、プラトンはこう考えている。もし囚人の一人が鎖から解放され、洞窟から脱出することに成功したらどうなるだろうか?その囚人が7歳の少年ジェイだったら?
レオス・カラックス、異界の扉へ導く
ヨーロッパのとある街を子連れが彷徨う。母は、劇場を目指しているのだが道に迷っているらしい。やがて劇場へたどり着く。既に3時間遅れだ。オーディションだろうか?母は、プロデューサーらしき男に懇願し、なんとか中へと入れてもらえる。
そこにはレオス・カラックスが鎮座している。彼は少年に「プラトンの洞窟を知っているか?」と訊かれる。映画はそこからJRにバトンタッチされたかのように不思議な世界へと転がっていく。
JRは『顔たち、ところどころ』で壁にバンクシーのような絵を貼っていた。今回もその芸をいかんなく発揮させていく。レオス・カラックスが『ホーリー・モーターズ』で壁を開けたように、街中の壁をビリっと剥すと異世界の入り口が開かれる。少年は、壁画へ置換されてしまい、ストップモーションアニメのようなカクツキで待ちゆく人々に自分の存在をアピールしているが、人々はスマホばかり見ていて気付かない。
映画はそのまま、バズビー・バークレーの、それも横一列のマスゲームをオマージュしたかのような演出が繰り広げられる。
観る/観られるの幻影をテクニカルに描いた本作にパワフルなものを感じた。