『ローカル・ヒーロー 夢に生きた男』出張リーマン買収紀

ローカル・ヒーロー 夢に生きた男(1983)
LOCAL HERO

監督:ビル・フォーサイス
出演:バート・ランカスター、ピーター・リーガート、デニス・ローソンetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

「死ぬまでに観たい映画1001本」にはビル・フォーサイス枠が存在する。私の持っているバージョンでは『シルビーの帰郷』が掲載されているのだが、他の版では『ローカル・ヒーロー 夢に生きた男』となっている。最近、プライムビデオにて気軽に観ることができるようになったので触れたのだが、これが面白かった。

『ローカル・ヒーロー 夢に生きた男』あらすじ

スコットランドの小さな村を舞台に、用地買収のためにやって来た石油会社のエリート男性が住民たちとの交流を通して自身の人生を見つめ直す姿を描いたヒューマンドラマ。

アメリカ最大の石油会社に勤めるエリート社員マッキンタイアは、コンビナート建設の用地買収交渉のため、スコットランドの小さな村を訪れる。住民からの猛反対にあうと覚悟していたものの、意外にも彼らは一獲千金の話に乗り気な様子。しかし浜辺の小屋に暮らすベンだけは提案を受け入れず……。

「アニマル・ハウス」のピーター・リーガートが主人公マッキンタイアを演じ、「地上より永遠に」などの名優バート・ランカスターが石油会社の社長役で出演。「炎のランナー」「小さな恋のメロディ」などのヒット作を生んだイギリスの名プロデューサー、デビッド・パットナムが製作を手がけた。

映画.comより引用

出張リーマン買収紀

ビル・フォーサイスは改めて空間、色彩の監督だといえる。話自体は、秒でオチまで予想がついてしまうもの。つまり、サラリーマンが土地の買収のために田舎町へ行くも、妙な情が生まれて来る系である。もちろん、ストーリーテリングとしては工夫があり、意外にもあっさりと、会計士、村の住人に受け入れられ話がトントン拍子で進む中で、ひとつ障壁が生まれるような転がし方をしている。

ただ、重要なのはショットである。村へ行くまでの、飛行機、車、兎を拾うといった牧歌的でありながら曇天で長い道中。それが進んでいるかどうかよくわからない絶妙な間延びした時間を生み出す。荒涼としている大地を映すも、長い時間の中で美しい紫に天が染まる場面と対峙し感極まる。これは、点ではなく線で土地と向き合う中で生まれる情緒の揺らぎを象徴するものがある。

交渉が成立するかの緊迫がサラリーマンサイドだけにあるわけではない。教会から、彼らの動向を観察し、こっそり群れを成して出ていく映画的ショットから、住人のざわついた心理を抽出しようとしているのである。最近観ないタイプの作品を味わったのであった。
※映画.comより画像引用