『目は開けたままで』言葉の杖を振る

目は開けたままで(2024)
Sleep With Your Eyes Open

監督:ネレ・ウォーラッツ
出演:Chen Xiao Xin、Wang Shin-Hong、Liao Kai Ro etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2024年11月7日(木)ー17日(日)より福岡市総合図書館で開催されるAsian Film Joint 2024にて上映される『目は開けたままで』を観た。これが不思議な映画であった。

『目は開けたままで』あらすじ

カイは傷心旅行で台湾からブラジルの沿岸都市へ降り立つ。彼女は立ち寄った傘屋でアジア系移民の店主フアンと出会い、彼が残した大量の絵葉書を譲り受ける。絵葉書の裏には、かつて彼が一緒に働いていた中国人女性シャオシンによる日記が綴られていた。やがて姿を消してしまったフアンを探しながら、カイは日記のなかの彼らの物語に自分自身を重ね始める。

※PR TIMESより引用

言葉の杖を振る

台湾からブラジルへやってきた女性が絵葉書を受け取る。そこにはアルゼンチンからブラジルへやってきた中国人女性がスペイン語で書かれた日記が記されており、彼女はそれに感化されていく。

本作は極めて文学的な作品であり、言語と言語との間でどうしても生まれてしまう溝へ眼差しを向けていく内容となっている。興味深いのは、ブラジルの話にもかかわらず形成される中華街的な場によって、文化の分断が強調されており、ブラジル人から見ると台湾人も中国人も「アジア人」として捉えられてしまっているような感覚を視覚的に落とし込もうとしている点にある。ここで重要となってくるのはブエノスアイレスからレシフェへやってきた中国人だろう。彼女は中国語でもポルトガル語でもない、そこでは自分しか分からないスペイン語でもって自分の心理を捉えようとする。人は時として孤独に内省したくなる。誰にも知られたくない、でも知らない誰かに届いてほしいかもといった矛盾が日記へと向かわせていく。それが主人公の孤独と共鳴する。この繊細さに惹きこまれるものがある。

もちろん、映画としてのショットもユニークだ。本作は落下を軸としたアクションが特徴的となっている。たとえば、プールでの小さな飛び込み(=落下)があった後に、プールサイドに西瓜が落下し、破裂する。危うく死者が出ただろう。間一髪で避けるところに映画的なショットを感じた。