『僕はキャプテン』移民問題とマッドマックスを掛け合わせる

僕はキャプテン(2023)
Io Capitano

監督:マッテオ・ガローネ
出演:セイドゥ・サール、ムスタファ・ファル、アフィフ・ベン・バドラ、イサカ・サワドゴetc

評価:10点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ヴェネツィア国際映画祭に出品されたマッテオ・ガローネ新作『僕はキャプテン』を上半期ベストの追い込みに観た。マッテオ・ガローネはどこかファンタジーをスパイスとして振りかけて現実の問題を描く傾向があるのだが、これは結構問題がある作品だと思った。

『僕はキャプテン』あらすじ

巨匠マッテオ・ガッローネ(『ゴモラ』)が放つ渾身の一作は、セネガルの青年2人がアフリカを縦断し、ヨーロッパを目指す壮大な旅の物語。セイドゥとムッサは、豊かな生活を求めて親族に知られることなく、ダカールを離れる。しかし、彼らを待ち受けていたのは想像を超える数々の困難だった。いわば現代版オデュッセイアの本作は、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)やマルチェッロ・マストロヤンニ賞(若手俳優賞)などを受賞、アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。

イタリア映画祭2024より引用

移民問題とマッドマックスを掛け合わせる

本作はアフリカからヨーロッパを目指す青年たちの冒険を描いている。暴力にさらされ、死の危機に瀕してもなお、自由と豊かさを求めてヨーロッパを目指すわけだが、『ミッドナイト・トラベラー』のように生の移民の冒険を知っている身からするとヨーロッパ人が想像する移民像の領域だけで作っている印象を受ける。小ぎれいな、社会派なヨーロッパ製アフリカ映画と言った感じだ。それだけならまだ目を瞑れるのだが、本作の問題点は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』的演出に傾けて、移民問題をスペクタクルにしてしまったところにある。激しく砂漠を爆走する車から人が落ちているのに助けないみたいな描写があって、ただカーチェイスといったわけではないから単に意地悪なだけで終わってしまっている残念さがある。そしてそこにマッテオ・ガローネ特有のファンタジー要素、浮遊するおばちゃんが登場するのだがノイズ以外の何物でもなかった。これは2024年上半期で観た中でしょうもない映画の一本であった。

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