【ネタバレあり】『ゴジラxコング 新たなる帝国』これぞ真の「超実写化」

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024)
Godzilla x Kong: The New Empire

監督:アダム・ウィンガード
出演:レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ダン・スティーヴンスetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『ブレア・ウィッチ』や実写版『DEATH NOTE』を手掛け、どれも知能指数が低い大胆な原作破壊っぷりを魅せたアダム・ウィンガード。しかし、レジェンダリー・ゴジラシリーズに関しては割と上手くいっているように思える。

最新作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』は前作以上に身体表象の映画となっていた。今回はネタバレありで語っていく。

『ゴジラ×コング 新たなる帝国』あらすじ


2014年の「GODZILLA ゴジラ」から始まったハリウッド版「ゴジラ」シリーズと「キングコング:髑髏島の巨神」の世界観をクロスオーバーさせた「モンスターバース」シリーズの通算5作目。

怪獣と人類が共生する世界。未確認生物特務機関「モナーク」が異常なシグナルを察知したことを発端に、ゴジラが君臨する地上世界とコングが生きる地底世界の2つのテリトリーが交錯し、ゴジラとコングが激突する。しかし、その先には人類にとってさらなる未知の脅威が待ち受けており、怪獣たちの歴史と起源、さらには人類の存在そのものの謎に迫る新たな冒険が繰り広げられる。

監督は、前作「ゴジラvsコング」でもメガホンをとったアダム・ウィンガード。出演は、こちらも「ゴジラvsコング」から続投となるレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ケイリー・ホトルのほか、「美女と野獣」のダン・スティーブンス、「シャン・チー テン・リングスの伝説」のファラ・チェンらが顔をそろえる。
映画.comより引用

これぞ真の「超実写化」

ハイエナのような怪獣に追われるコング。崖っぷちに追いやられたかと思うと罠を発動し、やっつける。安堵も束の間、生き残ったモンスターに狙われる。そこでコングは、敵の仲間の死骸をブシュッと引き裂き、体液をかぶることで威嚇する。コングの一日は命懸けだ。死闘が終われば、滝で身体を洗う。獲物を食う。しかし、ここで歯に痛みを感じる。カメラはコングの歯にクローズアップし、「虫歯」であることが判明する。いかれたストーリーテラーことアダム・ウィンガードだけあって、まさかの「虫歯」が物語のトリガーとなるのだ。

映画はコングの下から罠を発動し、上から体液をかぶる。下から上の運動と対比させるようにゴジラのアクションを捉える。カニ型の怪獣にむかって上から下に向かって破壊光線を撃ち込み、返り血を受ける。

このことから本作は映画運動に特化した作品であることが分かる。実際に映画の大半は英語以外の架空のセリフだ。ハリウッド大作にありがちな英語至上主義に陥ることはない。少数民族とは手話やテレパシーで対話をする。怪獣は怪獣なりの得意言語でコミュニケーションを図る。そんなんで、映画の内容は理解できるのか?これができるのである。今回の宿敵「スカーキング」がコングと対峙する場面。スカした顔をしながら歩み寄り、「なんだコイツ?」「銀歯なんかつけちゃってよへへ」といった態度を取る。どう考えてもこのセリフしか浮かばないだろう一意に紐づく運動がそこにあるのである。裏を返せば、本作はサイレント映画にしても話が分かるぐらいアクションによって物語が進行するのである。そして、決して英語話者の都合に歩み寄ることはないのだ。

かつて、『ライオン・キング』のリメイクが作られた時、ハイパーリアリズムに近いタッチから「超実写化」と惹句が打たれた。しかし、実際にはリアルすぎる動物たちが英語でしゃべるので違和感があった。だが、本作は紛れもなく「超実写化」であり、まるでナショナル・ジオグラフィックスを観ているかのように怪獣たちのイキイキとした生き様を拝める作品に仕上がっていた。

もちろん、粗も少なくなく、終盤の重力反転を活用したアクションは、重量を意識させる怪獣アクションと相性が悪い気がし、なおかつローランド・エメリッヒ作品のようにごちゃごちゃ観辛い印象を受けた。

ただ、そういった欠点に目を瞑れるほど満足いく作品であった。
※映画.comより画像引用