【Netflix】『毒』ウェス・アンダーソンの人力スプリットスクリーン

毒(2023)
Poison

監督:ウェス・アンダーソン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、デヴ・パテル、ベン・キングズレーetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ウェス・アンダーソンのNetflixロアルド・ダール短編集でのテクニックが凄いので連続して観ている。『毒』を観ると、ウェス・アンダーソンが演劇的/映画的の中道を見出した作品であることがよく分かる。

『毒』あらすじ

猛毒のヘビが自分のベッドにはい上がってきたことに気づいた男の物語。ロアルド・ダールの小説を原作とした、ウェス・アンダーソンの短編映画4部作のひとつ。

Netflixより引用

ウェス・アンダーソンの人力スプリットスクリーン

ウェス・アンダーソンの作品は演劇の舞台装置のようなハリボテ平面演出が多い。しかし、映画的に感じる。その差はどこにあるのだろうか?この手の問いに自分なりの解を見出すアプローチとして、映画が得意とする視点変更の側面があるかどうかが挙げられる。ウェス・アンダーソンの場合、一見すると舞台側が変化しており「視点変更」が行われていないように思える。しかし、空間錯覚を利用することにより擬似的に視点変更が行われており、それが演劇的でありながら映画的である不思議な感覚を生み出している。

『毒』の場合、横移動で隣のセットに映る訳だが、奥行きが極端に変更している。引きでのショットである空間の次に、横たわるベネディクト・カンバーバッチのベッドにズームしているかのような配置の空間を置く。つまりカットを割らずとも、奥行きの異なるセットを並べることでカットが割られたような錯覚(=視点変更)が生まれるのである。

ほかにも、映画におけるスプリットスクリーンをセットで実装している。屋外、通路、室内をセットによる壁を用いて同時に提示する。セットなので、俳優は自由に境界を超えて移動する。この移動は演劇的であるのだが、それぞれの通路とそれ以外の空間の奥行きが異なるため、映画のような空間に思えるのである。このように考えると、ウェス・アンダーソンは空間の使い方の達人だなと感銘を受けるのであった。

※映画.comより画像引用