【ネタバレ】『もっと遠くへ行こう。』モラハラの奇妙な連鎖

もっと遠くへ行こう。(2023)
FOE

監督:ガース・デイヴィス
出演:シアーシャ・ローナン、ポール・メスカル、アーロン・ピアetc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、Amazon Prime Videoに『もう終わりにしよう。』原作者の新作『もっと遠くへ行こう。』が配信されていたので観た。AIを用いたSF映画だったのだが、モラハラ夫のいやらしさを表現するギミックとして使われていたのが興味深かった。なお、何を言ってもネタバレになるのでネタバレ記事とする。

『もっと遠くへ行こう。』あらすじ

「LION ライオン 25年目のただいま」のガース・デイビス監督が、シアーシャ・ローナンとポール・メスカルを主演に迎えて描いた近未来SFドラマ。夫だけが宇宙移民の候補に選ばれたことをきっかけに、夫婦の関係や個人のアイデンティティが揺らいでいく姿を描く。

2065年。ヘンとジュニアの夫婦は、ジュニアの家系が代々受け継いできた人里離れた土地で静かに農業を営んでいた。ある日、そこへテランスという見知らぬ男が訪れてくる。テランスはジュニアが宇宙への移住要員候補に選ばれたことを告げ、夫婦を驚かせる。テランスの説明では選ばれたのはあくまでジュニアのみで、ジュニアが宇宙に行っている間は、彼の代わりとなる人物をヘンのもとに置くという。この提案をきっかけに、ヘンとジュニアの静かな生活は大きく変化する。

ヘン役に「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」などでアカデミー賞に計4度ノミネートされているシアーシャ・ローナン、ジュニア役に「aftersun アフターサン」でアカデミー主演男優賞にノミネートされて一躍注目を集めたポール・メスカルと、実力派の2人が夫婦役で共演。原作は「もう終わりにしよう。」で知られるベストセラー作家イアン・リードの同名小説で、リード自身も脚本・製作総指揮に参加している。Amazon Prime Videoで2024年1月5日から配信。

映画.comより引用

モラハラの奇妙な連鎖

とある一軒家しかない田舎に男がやってくる。地球のリソースが枯渇し、宇宙移住プロジェクトが行われる中で実験台に選ばれたのだ。しかし、選ばれたのは夫ジュニアだけであった。本作はモラハラ男の気持ち悪さを全面に押し出した作品である。男が宇宙移住プロジェクトの話をする際に、自分の狼狽を隠すように「妻が怖がっている」と語る。宇宙へ行く日が近づいてくると、彼女の職場であるダイナーに押しかけ「君の足音とかが恋しいんだ」と言い放ち、自分の欲望によって彼女をコントロールしようとするのだ。一方で、普通の生活を見ていると明らかに倦怠期で空気が重い。都合よく、彼女は消費され奥なる存在へと押し込められているのである。本作が凶悪なのは、彼はジュニアのクローンであるということだ。ジュニアが地球へ帰還し生活が再開するのだが、ヘンはストックホルム症候群的な形でクローンであるジュニアに依存しており、本物のジュニアによるモラハラが始まるのだ。あまりに強烈な負の連鎖にノックアウトしたのであった。