ハウス・バイ・ザ・リバー(1950)
HOUSE BY THE RIVER
監督:フリッツ・ラング
出演:ルイス・ヘイワード、ジェーン・ワイアット、リー・ボウマン、ドロシー・パトリック、アン・シューメイカー、ジョディ・ギルバート、サラ・パッデン、ピーター・ブロッコetc
評価:95点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
年末ベストの追い込みでフリッツ・ラングの『ハウス・バイ・ザ・リバー』を観た。あらすじ調べずに観たのだが私の好物である修羅場映画であり、想像以上の大傑作であった。
『ハウス・バイ・ザ・リバー』あらすじ
上品ぶったろくでなしのステファン・バイアン(ルイス・ヘイワード)は、家政婦の娘を暴行し、殺してしまう。兄に従順な弟のジョン(リー・バウマン)はしぶしぶながらも兄に協力し、二人で娘の死体を川に遺棄する。しかし、ジョンの兄嫁マージョリー(ジェーン・ワイアット)に対する密かな想い、警察が娘の行方不明事件に対する疑惑、ステファンの悪行、すべてがエスカレートしていく中、川は被害者と犯人の恐るべき再会を演出する。メル・ディネリによる才知溢れる脚本と、エドワード・クロンジェイガーによる生き生きとした映像。「ハウス・バイ・ザ・リバー」によって、メロドラマが芸術となり、道義的な悪夢となった。
甦り続ける罪の記憶
牧歌的な川と家の姿を正面から捉える。だが、牛の死体が川に流れることで一気に不気味な空気が漂い始める。ステファン・バイアン(ルイス・ヘイワード)は、隙を見計らったかのように家に入り家政婦の娘を脅す。彼女は当然叫ぶ。バレるかバレないかの宙吊り状態が生まれる。外にはおばちゃんがいて、何か異変に気づき、家へ向かってくるが、彼女の気づきは別のところにあった。こうして家政婦の娘は死んだ。バイアンは弟と結託して死体を川へ捨てることになるのだが、ここでもサスペンスが生まれる。バレるギリギリのところを掻い潜って死体は捨てられる。物理的に死体は消えた。しかし、罪は消えない。無数に注がれる疑惑の中、男たちはフラストレーションを溜めていく。そして、死体が川から浮上するアクシデントまで発生する。事件を隠そうとすればするほど、無惨に露見してしまうように、浮上した死体をどうにかしようとすればするほど、死体の全貌が露わとなる滑稽さにニヤリとさせられる。
映画は修羅場映画としての宙吊り状態のドライブ感を延々と疾走させていく快感に満ちている。それに加え、死の予感の外し演出にも冴えている。階段落ちの気配は、なかなかそれが実行されないことによってスリルを高める。そこへ、不自然にゆらめく布の動きが霊的な引力を呼び寄せる。これによりラスト、華麗な着地を迎えるのだ。素晴らしい終着点であった。
※MUBIより画像引用