あの島(2023)
The Island
監督:ダミアン・マニヴェル
評価:30点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション部門に出品されていたダミアン・マニヴェル新作『あの島』を観た。前作の『イサドラの子どもたち』が大傑作だったので期待していたのだが悪い意味で裏切られてしまった。
『あの島』概要
翌日にはモントリオールへ旅立つローザ。彼女と友人たちはその夏最後のパーティを、“あの島”と呼ぶ岩の周りで続けることにする。しかしそこに「ローザとの最後のパーティ」を演じる俳優たちの稽古場での練習風景、時間帯の異なるリハーサルの様子が挿入され、作品全体として多層的な構成をなしながら、物語は進んでいく。物語、そして演技の中で生起する感情と、夏の夜の闇の中では見えなくなってしまった顔や手の些細な表情や動きが、それぞれに作品を彩っていく。
本番とリハーサルを並べただけじゃあ……
モントリオールへ旅立つローザとの別れの感傷的なパーティを劇映画パートとリハーサルパートに分けて描く。『イサドラの子どもたち』に引き続きダミアン・マニヴェルは本番と裏側の対比によって人間を捉えようとしている。しかし、今回は単純に2つの側面を並べただけに見えて、感傷的な空間で押し切ってしまっているところが残念であった。『イサドラの子どもたち』の場合、イサドラ・ダンカンのダンスが譜面を通じて人へと継承されていく過程を段階的に描いていたから面白かった。譜面を通じた継承、人を介した継承。それによるパフォーマンスを舞台で観た観客が反芻することで継承されていく。異なる視点があったからこそ、本番/リハーサルの層に深みがあった。それが今回希薄だったのである。本祭でかなり期待していただけにがっかりしてしまった。