『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』アニメの中における実写の役割

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(2023)
Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem

監督:ジェフ・ロウ
出演:シャモン・ブラウン・Jr、ニコラス・カントゥ、ブレイディ・ヌーン、マイカ・アビー、セス・ローゲン、ジャッキー・チェンetc

評価:95点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『スパイダーマン:スパイダーバース』以降、ハリウッドのアニメ映画の表現に多様性が芽生えてきたように思える。『ミュータント・タートルズ』新作は、グラフィックノベルのような厚塗りの色彩、クレイアニメのような手触りで描かれている。予告編を観た時からピンと来るものがあり、劇場へ駆けつけた。これが素晴らしい作品であった。

『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』あらすじ

ニューヨークを舞台にカメの忍者4人組の活躍を描き、コミック、ゲーム、アニメ、映画などさまざまなメディアで根強い人気を誇る「ミュータント・タートルズ」を、アメコミタッチの新たなビジュアルで映画化した長編アニメーション。

ミケランジェロ、ドナテロ、ラファエロ、レオナルドは、不思議な液体「ミュータンジェン」に触れたことでミュータントとなったカメたちだ。目立つ姿を隠すため地下や路地裏で身をひそめるように過ごしているが、中身は普通の人間のティーンエイジャーと変わらない。学校に行ったり恋をしたり、人間と同じ生活を送ってみたいと願いながら、拳法の達人であるネズミのスプリンターを師匠に、武術の腕を磨いている。ある時、そんな彼らの前に、ハエのスーパーフライを筆頭としたミュータント軍団が現れる。同じミュータントの仲間がいたことを喜ぶタートルズだったが、スーパーフライ軍団は人間社会を乗っ取るという野望を抱いていた。

コメディアンで俳優のセス・ローゲンがプロデューサーを務めた。監督は、アカデミー長編アニメーション賞にノミネートされた「ミッチェル家とマシンの反乱」で共同監督を務めたジェフ・ロウ。日本語吹き替え版の声優は宮世琉弥、「日向坂46」の齊藤京子、佐藤二朗ら。

映画.comより引用

アクションの中で生まれる友情

アニメは現実をデフォルメしてそこからリアルを掬い上げることができる。確かに、実写映画においてVFXを用いて現実ではあり得ないような動きを実装することができる。これもある種のアニメではあるが、現実の景色と地続きになるようにチューニングされてしまうので、あるいは我々が普段見る光景に馴染ませてしまうので、純粋なアニメと比べるとリアルを掬い上げるのは難しいのかもしれない。何故、この話をしたのかといえば、本作では実写が組み込まれているからだ。タートルズはネズミのスプリンターから人間との接触は危険だと徹底的に教え込まれている。飄々と夜のニューヨークを謳歌するも、人間のような生活は遠い存在である。その断絶を強調する場面として、野外上映の映像がある。これは実写の映像が用いられているのである。また、彼らが修行するときには往年のカンフー映画のフッテージが挿入される。どこか遠い存在への憧れが描かれているのだが、野外上映はライフスタイルに対して、カンフー映画は精神的な部分に対してベクトルが向いている。タートルズの心理表現として軽率に映像スタイルを変えていき、それが本作がアニメである必然性を強化していく。ここに魅力を感じた。そして、DJ感覚で敵味方構わずビートを刻む。戦闘時には「餃子4人前お待ち遠様!」と言いながら現れる。アクションは上昇下降、主観客観を使い分ける。ただアクションを魅せるのではなく、混沌としたアクションの中で友情が芽生えていき、バラバラになった者同士が強大な敵へ向かって収斂していく。荒唐無稽でありながら、洗練された映画的運動で物語を紡ぎ切る。その圧倒的手腕に開いた口が塞がることはなかった。次回のアカデミー賞は本作か『マイ・エレメント』に受賞してほしいものがある。

P.S.先日、YouTubeで2chまとめ動画の研究をしていた時に、ニート4人兄弟の話を見つけたのだが、サムネがミュータント・タートルズになっていて、実際に「ニートルズ」と煽られていた。それを急に思い出し、吹きそうになった私であった。

※映画.comより画像引用