HOME INVASION(2023)
監督:Graeme Arnfield
評価:95点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2023年は中々傑作な日本未公開映画に出会えず厳しい年なのだが、実験映画界隈を漁っていたらついに面白い作品を見つけることができた。それが『HOME INVASION』である。これが全編○画面の作品であった。
『HOME INVASION』概要
A nightmarish essay film on the history of the doorbell, tracing its invention and constant reinventions through 19th-century labour struggles, the nascent years of narrative cinema, and contemporary surveillance cultures. Along the way producing a terrifying portrait of the technological ideologies that have shaped our present and the nightmares of the people they emerged from. Made in bed with a mixture of found materials from archival patent illustrations, domestic security footage to suspenseful horror movie clips, soundtracked by historical prepared-piano pieces and manipulated field recordings the film asks what is to be done with machines that don’t work for us? With systems that hinder radical futures, that profit off convenience and use our fears against us. What happens when our homes and our dreams have been invaded?
訳:19世紀の労働争議、物語映画の黎明期、そして現代の監視文化を通して、ドアベルの発明と絶え間ない改良をたどる、悪夢のようなエッセイ映画。その過程で、現代を形成してきた技術的イデオロギーと、そこから生まれた人々の悪夢のような恐ろしい肖像が生まれる。特許の図版や国内のセキュリティ映像、サスペンスホラー映画のクリップなど、拾い集めた素材を組み合わせてベッドで制作された本作は、歴史的なプリペアドピアノ曲と操作されたフィールドレコーディングのサウンドトラックで、我々のために働かない機械に何をすべきなのかを問いかけます。急進的な未来を妨げ、利便性で利益を上げ、私たちの恐怖を逆手に取るようなシステムに対して。私たちの家と夢が侵略されたとき、何が起こるのか?
※Festival Scope Proより引用
覗き穴から見える世界
様々な図版を並べていきタイトル『HOME INVASION』が表示される。ドアベルから映し出される魚眼の歪んだ画は、宅配業者が投げるように荷物を置いたり、盗人が強奪する犯行の決定的瞬間を捉える。一方で、人々が逃げ回るもその原因が見えない不気味な状況も提示する。この対比により、観る者の好奇心を刺激する。映画は覗き見のメディアであることを強調するように、D.W.グリフィス作品やホラー映画のフッテージを繋いでいき、やがて歴史的文書を捉えていく。本作はカメラの登場により、人々が視覚を拡張させていった結果、欲望が刺激されると共に、不安が広がってしまっている様子を象徴している作品だと捉えることができる。終盤において家の中へとカメラが侵入する。ホラー映画のような虚構が現実に侵食してくるのだが、これは物理的なものではなく心理的な侵入を言い表しているのだろう。
このような理屈抜きにしても現実離れした色彩の中、パニックになる人を捉えていく描写はめちゃくちゃクールで痺れた。上半期のベスト候補に入る作品といえよう。