【U-NEXT】『バーチャルで出会った僕ら』全編VRChatで描くメタバースドキュメンタリー

バーチャルで出会った僕ら(2022)
We Met in Virtual Reality

監督:Joe Hunting

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

2022年はVTuberやメタバースを軸に仮想世界について深掘りしていった年であった。そんな中、ずっと観たかった作品があった。それが”We Met in Virtual Reality”だ。本作はデンマークのドキュメンタリー映画祭CPH:DOXで上映された全編ソーシャルVRプラットフォームである「VRChat」内で撮られた作品である。バーチャル美少女ねむ「メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界」で書かれていた内容への理解が深まる作品だと思い、下半期はずっと本作のことを探していたのですが中々遭遇しなかった。そんなある日、映画仲間から1通のLINEが届いた。

「これ、知ってますか?」


私の探していた作品だった。しかも、なんとU-NEXTに来ていたのである。最近追加されたばかりなのか、まだFilmarksには登録されていない。Twitterでも誰も気づいていない。これは私が観るしかないと急遽、会員登録して観ることにした。文章やぽこピーのVRChat動画では分からない「メタバースに住む」行為についての理解が深まるドキュメンタリーであった。

『バーチャルで出会った僕ら』あらすじ

新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウン期間中、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」が話題となった。そのユニークな世界に魅入られた人たちは、デジタル領域で人と会い、日常を過ごしている。そんな彼らがVR世界で繰り広げる生活を追体験していく。

U-NEXTより引用

全編VRChatで描くメタバースドキュメンタリー

狭い空間に無数のアバターがひしめき合う、わいわいヴァーチャルな盃を交わす者、酔い潰れて寝ている者が入り乱れる。まるで深夜1時の歌舞伎町のような混沌とした空間が広がっている。カンファレンスでは、ヘルメット姿の男がポータルを開き、広大なワールドへと仲間を誘う。そこでは、運転可能な自動車が披露される。住人は慣れない手つきで協力しながら扉を閉め、他のアバターやパトカーに激突しながらドライブへと没入する。懐メロをかけながら、ボンネットや荷台と好きな場所に乗りながら、談笑交わし、旅を楽しむ。アニメのような光景が広がっている。では、これは虚構なのか?否である。彼らにとってVRChatの世界は「現実」なのだ。なりたい自分になることができるのである。

カメラは一人の女性アバターに迫る。彼女は物理世界で聴覚に障害を抱えている。VRChatの世界では、手話教室を開いて仲間と心を通わせる。そんな彼女の手つきや表情は、アバターを介しているものの、物理世界での彼女の内面が注ぎ込まれておりイキイキとしている。観ている方は、彼女に自ずと人間味を抱く。VTuberが配信者とアバターの重ね合わせにより現出する存在であるとのことだが、VRChatでのアバターたちも同様、重ね合わせの存在としてメタバース内に現出しているのである。そこでは、物理世界同様のことが当たり前のように行われる。ダンスに励んだり、人々を楽しませるためにショーを開くこともある。楽屋裏では、綿密な打ち合わせが行われる。親密な関係になった者同士がデートを重ねたりする。結婚式も行われるのだ。ひとときの娯楽を超えて生活の一部となった状況が赤裸々に綴られていくのだ。

彼らはなぜ、VRChatに夢中となるのか?

カメラはあるアバターにカメラを向ける。彼女は、物理世界で苦しみを抱え、アルコール中毒になっていたと告白する。病院沙汰になり、これは良くないと思った矢先に出会ったのがVRChat。仮想空間でダンスを踊ることで高揚感を得られ、アルコールから自分を遠ざけることに成功したとのこと。VRChatでの活動が功を奏し、パートナーもできたと語る。

実際に、『バーチャルで出会った僕ら』を観て想像以上の体験があることが分かった。テレビ画面で観ているにもかかわらず、深い没入感を得られた。VRゴーグルで体験したらもっと深い体験になるんだろうなと感じた。これはメタバースに興味ある方必観のドキュメンタリーである。

※IMDbより画像引用