ドロステのはてで僕ら(2019)
監督:山口淳太
出演:土佐和成、朝倉あき、藤谷理子、角田貴志、石田剛太、諏訪雅、中川晴樹、酒井善史、永野宗典、本多力etc
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
映画仲間から猛烈にオススメされたものの時期を逃してしまった『ドロステのはてで僕ら』。Netflixで配信されていたのでようやく観賞しました。『カメラを止めるな!』を彷彿とさせる低予算ならではのアイデアがとても良い映画でありました。
『ドロステのはてで僕ら』あらすじ
「サマータイムマシン・ブルース」などで知られる人気劇団「ヨーロッパ企画」の短編映画「ハウリング」をリブートした劇団初となるオリジナル長編映画。とある雑居ビルの2階。カトウがテレビの中から声がするので画面を見ると、そこには自分の顔が映っていた。画面の中のカトウから「オレは2分後のオレ」と語りかけられるカトウ。どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差でつながっているらしい。「タイムテレビ」 の存在を知った仲間たちは、テレビとテレビを向かい合わせて、もっと先の未来を知ろうと躍起になるが……。主人公カトウ役の土佐和成をはじめとする劇団メンバーのほか、朝倉あき、藤谷理子らが出演。原案・脚本を劇団の代表である上田誠、監督を劇団の映像ディレクター、山口淳太が務める。
2分後の2分後の2分後、そしてn分前の世界
パソコンから自分が語りかけてくる。
「2分後の自分だ」
と語りかけてくるもう一人のカトウ(土佐和成)。しりとりをすることとなる、「りんご」と言ったら普通すぎて相手の正体を見破られない。「リンボーダンス」と答えると、相手は言葉を返してくる。なくしたピックの場所を教えてくれる。怪しいと思い1階に行くと、2分前の自分がいた。そしてテレビに映った自分と同じ会話をすることとなる。ここでカメラは、男の手を映す手にはピックが握られており、テレビにも同様のピックが映っている。
本作は劇団「ヨーロッパ企画」の作品。そのため、演劇的オーバーアクションが主軸となっている。それなら演劇でいいのではないか?本作はその疑問を打ち返す、映画ならではの演出を行なっている。ピックへのフォーカスを当て、パソコンとテレビの時空の歪みが本物である事を強調する。さらに、1階から2階に往復する事で、映画の持つ現実的な移動でもって世界観に没入させることに成功している。
やがて、カフェに集まる個性的な面々が、ずっと先の未来を知るために、2階のPCを1階にもってきて合わせ鏡を作る。こうすることで、4分先、6分先が見えるのだ。盛り上がるカフェの人々に対して、カトウは「よそうよ」と止めに入る。しかし、パラドックスが生じるから2分後の世界に自分が映っている以上、同じ事をしないといけなくなる。確定された未来に対して操られていくような感覚に葛藤していくのだ。
2分先が見える世界といったシンプルなネタを突き詰めていき、ミニマムながらも複雑怪奇な物語を編み込んでいく。複雑な映画はとっつきにくいイメージがあるが、登場人物のようにDont’t think, feelと感覚的面白さに引き込んでいくところに好感が持てる。そして、劇団としてのチームワークを活かした、モニター画面とのシンクロ芸に魅了されるのだ。
正直、これは体験の映画であり、あまり多くは語りたくない作品だ。
とにかく、Netflixで観てくれとしか言いようがない。
楽しいがいっぱいでした。