テクノボス(2019)
Technoboss
監督:ジョアン・ニコラ
出演:Miguel Lobo Antunes、ルイサ・クルーズ、アメリコ・シルバ、ドワーティ・ギマラエス、Matias Neves etc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MUBIでポルトガルの新鋭ジョアン・ニコラ新作『Technoboss』が配信されていたので観ました。
『Technoboss』あらすじ
Luís Rovisco, divorced and well into his sixties, is hoping to retire soon from his job. Until then, the songs he dreams up during the day while driving make up for all the injustices in his life. But before Lucinda, the receptionist at Almadrava Hotel, he finds himself singing to a different tune.
訳:離婚して60代になったルイス・ロビスコは、そろそろ仕事を辞めたいと考えている。それまでは、日中の運転中に夢に描いた歌が、彼の人生の不公平を埋め合わせてくれる。しかし、アルマドラバ・ホテルの受付嬢ルシンダを前に、彼はいつもとは違う曲を歌っていることに気づく。
※MUBIより引用
音楽は心を救うbyジョアン・ニコラ
ジョアン・ニコラは『ジョン・フロム』の中で、ヴァカンス時期の集合住宅街で外に行きたくても行けない少女たちのアンニュイ、閉塞感をファンタジックに描いてみせた。単に、閉塞感を「ツライ」感情一つで描かないのがジョアン・ニコラの良さかなと思っているのですが、それは本作でも通用した。主人公Luís Roviscoは機器メンテナンスの仕事をしており、呼び出しがあれば東奔西走車一つで駆け回る。だが、彼は不器用で、仕事にもやり甲斐を感じていない。セキュリティーボタンのメンテナンスに行けば、何度チェックしてもエラーで弾かれてしまう。フラストレーションが溜まるばかりだ。しかし、そんな彼は車の中で歌えば一度世界が広がる。自由になれるのだ。バンドが練習しているもんならそこに混じる。すると少しだけ人生が豊かになったように思えるのだ。そんな彼の人生は薄っぺらいのかもしれない。実際に、彼が歌うと世界は手描きの絵に変わり、虚構が支配する。彼がビールを呑み現実逃避すると、背景がなくなり彼は暗闇に佇むのだ。
しかし、薄っぺらくても微かな楽しみがあれば心は救われるのではないか?ジョアン・ニコラの温かい視線が心を癒してくれます。本作は、ミュージカル映画でありながらもミュージカルパートでは動きが極端に少ない。車の中で歌うだけだ。しかし、ミュージカルとして成立しているように思えるのは、音楽が登場人物の気持ちの揺らぎを正確に捉えており、その躍動感が観客の心にまで到達しているからだろう。そして電話の着信音が、その躍動を遮る機能として効果的に使用されているキメの細かさも評価したい。
シンプルながらも記憶に残る良作でした。
※画像はIMDbより引用
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