【ネタバレ考察】『人体のサバイバル!』クローネンバーグかな?その頭痛はロボコンのせいかな?

人体のサバイバル!(2020)

監督:奈須川充
出演:松田颯、水潘めぐみ、石田彰、岩崎ひろしetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

狂気のカルト映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』と同時上映された『人体のサバイバル!』。小さくなって人体の中に入るプロセスの中で体内の構造を紹介していく映画といく『ミクロの決死圏』、『インナースペース』的内容だが、ロボコンの狂いっぷりが伝播し、クローネンバーグ的汚染の仕方を魅せていました。一見するとまともな作品に見える。コロコロコミック系のタッチで描いた教育映画に見えるが、子どもにはあまりにハードな展開を魅せる珍作でありました。ネタバレありで考察していきます。

『人体のサバイバル!』あらすじ


全世界で累計3000万部を発行する「科学漫画サバイバル」シリーズを劇場アニメ化。ナノサイズに縮小できる人体探査機「ヒポクラテス号」に乗り込んだジオとノウ博士を、ピピがうっかり飲み込んでしまう。巨大な歯につぶされそうになるのを必死で避けながらピピの体の中に流れ込んだ2人は、胃から腸へと向かって脱出を目指す。ところがトラブル続きで脱出不可能な絶体絶命の大ピンチに。さらに、ピピが突然苦しみ始めて……。原作は、人体や自然災害、宇宙、AIなど毎回さまざまなテーマを取り上げながら、主人公のジオをはじめとした子どもたちが知恵と勇気をしぼって困難に立ち向かう姿を描き、愉しみながらさまざまな科学知識が身につくと評判のオールカラー科学漫画。声の出演は松田颯水、潘めぐみ、石田彰、岩崎ひろしらに加え、ノウ博士の所属する研究所の所長役に竹中直人。特撮コメディ「がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻」および短編アニメ「スプリンパン まえへすすもう!」が同時上映。
映画.comより引用

クローネンバーグかな?その頭痛はロボコンのせいかな?

人物紹介が始まるのだが、どうもおかしい。

人物名は日本語名と英語名が提示される。GEO→ジオは分かる。ゲオではなくジオなんだなと思って観ていたら、ヒロインのピピの英語名が《Phoebe》となっているのだ。どう考えてもピピと呼べないし、フォイベーとは月の女神の名。何故、その名を起用したのかが全く分からない。そして博士の紹介も始まるのだが、ノウ博士の英語名はDr.Noではなく、Dr.Brainなのだ。ノウの正体は《脳》だったのだ。この法則性が読めない命名に困惑しながらなんとか映画に食らいつく。

ジオのミスで小さくなってしまったヒポクラテス号はそのまま、ピピに捕食され、膨大なクッキーの残骸にまみれ人体の深部へと入っていく。『ミクロ・キッズ』で回避された食糧に飲み込まれ体内に入ってしまうバッドエンドをやってのけるのだ。そして人体内部では3DCGを多用したグロテスクさと、それに付随する胃や腸の説明は『ミクロの決死圏』好きには堪らないワクワク感が立ち込めています。だが、子ども映画だというのに、事態は深刻を極めていく。なんと、ピピの体内には大量の寄生虫がいたのだ。それをレーザーで倒していくスペクタクルがあるのだが、子どもの体に大量に潜む寄生虫に少し恐怖を抱きます。しかも、ヒポクラテス号は大便として外へ出る直前に、血管に取り込まれ、脱出が困難となり始める。なんとか鼻から出ようと鼻血を出そうとすれば、ティッシュで鼻を塞がれてしまい、耳から出ようとすれば大きな音に巻き込まれてしまう。目から出ようとすると、眠っていて脱出不可能だ。何重にも希望が打ち砕かれるのです。

そしてそうこうしているうちに脳へたどり着くのですが、どういうことだろうか子どもだというのに腫瘍ができていているのだ。目眩の原因になっていることが分かりつつ、なんとか体外に出たジオと博士だが、どういうわけかピピは重体に陥ってしまう。そして、再び体内へ入ることとなるのだ。確かに、『ミクロの決死圏』愛が強く、脳で決着をつけたくなるのは分かるのだが、子ども一人で脳腫瘍を倒すために体内に入れさせるなんて、しかも『ミクロの決死圏』も『インナースペース』も2時間かけて体内から脱出する話となっているのに、ここでは2度に渡って地獄旅をするのだ。

いくら、「未知への挑戦こそ正義だ!」な人が集まっているとはいえ、あまりに重い話に開いた口が塞がりません。しかも、ロボコンの件があるので、ピピの脳腫瘍ってタンタンメンドラッグムービーの影響なんじゃないかと段々思えてくるのです。クローネンバーグのように、苦しみと肉体的カタルシスを展開していく本作は、子どもにある種のフェチズムを芽生えさせそうな不穏な空気を持っている。

一見すると、まともで教育的な映画に見えるのですが、『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』および短編アニメ『スプリンパン まえへすすもう!』の後に観ると不安しかない作品でありました。

久しぶりに『ミクロの決死圏』が観たいですね。

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