『東京干潟』あなたの知らない多摩川の世界

東京干潟(2019)

監督:村上浩康

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、山形国際ドキュメンタリー映画祭で見逃した『東京干潟』を観にポレポレ東中野に行きました。ドキュメンタリー映画は、あまりシネフィルと呼ばれる種族の間でも熱心に掘られてないジャンルだけに探せば探す程満ちなる傑作・秀作が現れてくる。本作は、将来性のある新人監督に送られる新藤兼人賞金賞を受賞している作品。恐らく、キネマ旬報文化映画ベストテンにも入線するだろう作品だ。東京多摩川でシジミ採りをして暮らすホームレスを5年近い歳月かけて密着取材したドキュメンタリーだ。かつては、東京上野の山にホームレスの集落があったのだが、都市開発でドンドンと駆逐され、上野はもちろん多くの都市部でホームレスを見かけなくなった。見えない断絶が、見落としてしまっているものをこのドキュメンタリーは捉えていました。

『東京干潟』あらすじ


多摩川の河口でシジミを獲り、捨て猫と暮らすホームレスの男性の姿から、現代社会のさまざまな問題を見つめるドキュメンタリー。多摩川の河口でシジミを獲って暮らしている、80代半のあるホームレスの老人。彼は捨てられた十数匹の猫を殺処分から救うため、日々世話をしながら、干潟の小屋で10年以上生活していた。シジミと共存していくため、成長途中の稚貝は獲らないというルールを自らに課している老人だったが、近年は一部の人々の無計画な乱獲で、シジミの数は減少していた。また、2020年東京オリンピックに向けて干潟には橋がかかり、沿岸には高層ホテルが建てられていく。東京という大都市の最下流から、変わりゆく街の姿を複雑な思いで見つめる老人の姿を通し、環境破壊や高齢化問題、格差社会、ペット遺棄など、現代日本が抱えるさまざまな問題を浮き彫りにする。同じく多摩川河口の干潟を題材にしたドキュメンタリー「蟹の惑星」が同時公開。
映画.comより引用

あなたの知らない多摩川の世界

10年以上、多摩川の辺りでシジミを取って生活するホームレスにカメラは向けられる。筋肉隆々、ボケとも無縁な80代を超えたおじいさんは、今やシジミの生態系の専門家。シジミが多摩川の水を浄化していることを知っている。しかしながら、人々はそんなホームレスなど路傍の石としてしか見ていない。いや見えてすらいないのだ。

都市開発により、泥が取り除かれ干潟が小さくなる。庶民はレジャーとしてシジミを取り、金に目が眩んだ業者は小さなシジミまで取ってしまう。年々シジミ量が減り、生態系が壊れていき、捨て猫保護の負担が増えていき、しまいには台風により簡易小屋が水没の危機に瀕する。

しかし、おじいさんは怒りの声を挙げることも、人生に絶望することもなく陽気に生きていく。寒さを凌ぐためにチューハイを呑み、タバコを嗜む。干潟にハマって動けなくなっている人を見かけたらすかさず助けに向かう。猫は友達。どんなにニャーニャー飯を急かされても決して見捨てることはしない。もはや、干潟を守る仙人のようになったこのおじいさんは恋の花まで咲かせてしまうのだ。少し字幕過剰な気はしたが、この映画でしか観られない生き様をたっぷりと魅せてくれて非常に面白い。

すぐそこにありながらも、全く知らない世界にただただ驚かされるばかりだった。

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!
ブロトピ:映画ブログ更新

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です