Buñuel in the Labyrinth of the Turtles(2018)
監督:Salvador Simó Busom
評価:55点
おはようございます、チェ・ブンブンです。この時期になるとアカデミー賞候補作が次々と明らかになってきます。今年は、長編アニメーション部門の1枠を争っているヨーロピアンアニメ軍団の激戦が注目です。恐らくノミネートに残るのはNetflix配信の『失くした体』になるとは思いますが、その中に埋もれている奇妙な作品を観たので紹介したい。
※邦題『ブニュエルと亀甲のラビリンス』としてEUフィルムデーズ2021上映が決まりました。
『ブニュエルと亀甲のラビリンス』あらすじ
The true story of how Luis Buñuel made his third movie.
訳:ルイス・ブニュエル監督3作目に纏わる実話
※IMDbより引用
自分探しの旅
文化人集まるパリに一人の男ありけり。彼の名前はルイス・ブニュエル。サルバドール・ダリと共に製作した『アンダルシアの犬』で一躍有名になった彼は、『黄金時代』でソドムの市たる当時としては壮絶なシュールかつ過激で社会批判的作品を製作するのだが、劇場で相次いでブーイングが起き、終いには上映禁止となってしまう。調子に乗りすぎた彼の前には冷たい風が吹き荒れる。劇場はもう取り合ってくれないのだ。
シャワーを浴びる彼は自問自答する。シュルレアリズムは勝利した!と鼓舞してみせるのだが、彼は寝ても覚めても悪夢に襲われるのだ。それは芸術で食っていくことができなくなった彼が無意識に感じる死への道のりだった。そんな彼は、自分探しの旅にスペインの辺境ラス・ウルデスを目指すのだ。都会の息苦しさから逃れるように。そして、未知なる土地の貧しさ、暴力、混沌をフィルムに収め、客観的に物事を捉えていくことで自分を取り戻そうとする。
本作は、シュルレアリズムというフレームで知った気になってしまっているルイス・ブニュエルの苦悩に迫る。それによって、我々が人生に行き詰まった時に現実逃避として異郷へ羨望を抱く行動心理はルイス・ブニュエルのような奇人も同じく持っていたことを証明し、アーティストの内面に近づけていく効果をもたらした。
そして、彼の持つ悪夢を強調するためにアニメーションが使われている。ただ、『リズと青い鳥』、『若おかみは小学生!』をはじめとした日本のアニメが心理描写を効果的に描く為のアニメーション技法をとっくのとうに確立させているせいもあり、本作のアニメーション描写がイマイチ効果的に見えなかった。例えば、ブニュエルがパン屋でフランスパンを買おうとすると、周りのパンが溶け始め、外には巨大な構造物が蹂躙するという悪夢描写があるのだが、全く狂気や恐怖を感じないのです。トラウマになるレベルの表現を演出してこそ、ブニュエルの心理的落ち込みに説得力が増し、本作がアニメーションで描かれる意義も見いだせるのだが、そういったことが全然できておらず、結果としてテーマがマニアックなだけの映画に留まってしまいました。
残念。
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