【見逃シネマ】『オオカミの家/The Wolf House』日本公開希望、朽ちては生まれを繰り返す謎のチリアニメ

The Wolf House(2018)

監督:Joaquín Cociña, Cristóbal León

評価:90点

第6回新千歳空港国際アニメーション映画祭にて、話題作『失くした体』に混じってノミネートを果たしたチリのアニメ映画『The Wolf House』。去年mubiで鑑賞して、めちゃくちゃ面白かったので、応援がてら紹介していきます。

『The Wolf House』あらすじ


Cristobal León & Joaquín Cociña監督『The Wolf House』(2018年/チリ)は、周辺環境から隔離された村より逃げ出した少女が迷い込んだ家で起こる奇妙な出来事を、部屋全体をコマ撮りするダイナミックな手法で描きます。軍事政権時代のチリの史実をベースにした本作はチリ各地の美術館での公開制作を経て作られ、その実験的な手法が高く評価。ベルリン映画祭でのワールド・プレミア、アヌシー国際アニメーション映画祭での審査員特別賞受賞など、話題となった作品です。

朽ちては生まれを延々と繰り返す地獄絵図

本作は、難民の物理的にも感情的にも閉塞的で息苦しい様をストップモーションアニメで描いた作品だ。ストップモーションアニメと聞くと、クエイ兄弟やチェコのトチ狂ったアニメを思い浮かべるかもしれない。しかしながら、このJoaquín Cociña, Cristóbal Leónの2監督は数々の高等技術の結晶であるストップモーションアニメ史に巨大な槍を突き刺した。本作は、70分間、常時目まぐるしくモノが朽ちて再生する様子から、難民の辛さ、そして何度でも蘇るが如く不屈の精神を表現している。

壁に巨大な顔が生まれ、溶け出す、トイレに少年が座ったかと思うと、トイレが爆発してベンチに様変わりする。巨大な豚の絵が2次元の壁を超えカメラに向かってボールを蹴りつける。無から無数の糸が綿が飛び出し、一つの人間を早世したと思いきや、地面にドロドロと溶け出して消えてしまう。豚がグロテスクな裸人間に様変わりし、少女の周りを彷徨く…

ヤン・シュヴァンクマイエルやイジー・トルンカのおもちゃ箱をひっくり返したようなアニメに見慣れている人であっても、この膨大な時間と手間をかけて作られた、ぶっ壊れた世界に阿鼻驚嘆し、指をくわえて70分間眼前でグルグルと変わりゆく景色を見守ることしかできない。

そしてこの作品が見つけた発見は映画史に残るといっても過言ではない。それは、ストップモーションという、パラパラ写真でもワンカット長回しに魅せることが可能だということだ。この作品は、バグった様に目まぐるしく変わるドールハウスの様な空間を一度も暗転させることなく突き進むのだ。ストップモーションなんだけれども、全てがシームレスに繋がる。そして実写映画では不可能な長回しとして観客の瞳に強烈な印象を焼き付けるのだ。

これは百聞は一見に如かず。観て欲しい。きっと貴方の心に焼きつくことでしょう。

是非ともイメージ・フォーラムかどこかで一般公開されることを強く祈ります。
▶︎2023年8月邦題『オオカミの家』にて公開決定!

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