ピータールー マンチェスターの悲劇(2018)
Peterloo
監督:マイク・リー
出演:ロリー・キニア、マキシン・ピーク、テレサ・マホーニー、ティム・マキナニー、デヴィッド・バンバーetc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
昨日TOHOシネマズシャンテで『ピータールー マンチェスターの悲劇』を鑑賞してきました。TOHOシネマズのフリーパスポートは最近、利用制限があり人気の作品は使えない。いつもは神奈川のTOHOシネマズを使うので然程気にならないのですが、やはり都心部のTOHOシネマズは使えない上映が多いですね。本当はヴィム・ヴェンダースの『世界の涯ての鼓動』も観ようと思ったのですが、使用できず、1本に留めました。
『ピータールー マンチェスターの悲劇』あらすじ
「秘密と嘘」「ヴェラ・ドレイク」などで知られるイギリスの名匠マイク・リーが、19世紀初頭のイギリスで起きた事件「ピータールーの虐殺」を映画化。1819年、ナポレオン戦争後で困窮のさなかにあるマンチェスター。深刻化する貧困問題の改善を訴え、政治的改革を求める民衆6万人がセント・ピーターズ・フィールド広場に集まった。鎮圧のため派遣された政府の騎馬隊は、非武装の群衆の中へ突入していく。多くの死傷者を出し、イギリスの民主主義において大きな転機となったこの事件の全貌を、リー監督が自ら執筆した脚本をもとにリアルに描き出す。出演は「007 スペクター」のロリー・キニア、「博士と彼女のセオリー」のマキシン・ピーク。
※映画.comより引用
多重露光 うっすら浮かぶ ニホンのミライ
『ターナー、光に愛を求めて』に引き続き、19世紀絵画のテイストで描くこの歴史劇は日本人にとって遠く離れたイングランドの200年前の出来事でありながら、今や凋落の一途を辿る日本と重なるところが多い作品であった。
時はナポレオン戦争が締結した1815年から始まる。議会では戦争終結に導いたウェリントン公爵に75万ポンドの報酬を与えることが決定する。
それから数年後、市民の生活は豊かになることはなかった。帰還兵はPTSDに悩まされながらも職を探すが、どこも雇ってくれない。賃金はドンドン引き下げられ、家賃と燃料代で給料の大半を奪われてしまう。
裁判は、一見聖書を用いロジカルに判決が下されるようで、コートを盗んだだけで死刑になったり、予算の関係でオーストラリア流刑にするのを取りやめ公開鞭打ちにするといい始めたりめちゃくちゃだ。
一方、ウェリントン公爵は戦後大した仕事もしていないのに給料は150万ポンドに跳ね上がっている。
そんな悲惨な状況に対抗すべく市民が立ち上がり、デモ集会を開こうとするプロセスが本作の肝となっている。
政府サイドは、なんとかして集会を取りやめようと策を練る。企業に給料を1ポンド上げるようにするのだ。デモの熱気は時が経てば冷めるもの。冷めさせるには些細な幸運を与えればいいと賃上げ作戦にでる。
一方、面白いことに婦人会は思わぬ譲歩にでる。成人男性の参政権を勝ち取る運動に加担するのだ。たしかに男尊女卑はある。しかしながら、男女市民の願いは、貴族が牛耳り貧富の格差が生まれている現状を打破すること。その為には市民の参政権獲得が大事。ただ、男尊女卑が蔓延する中、女性参政権も求めては、男性市民の参政権すら獲得できなくなる。二兎追うものは一兎も得ずの精神で譲歩加担するのだ。
どうでしょうか?今の日本に似てないだろうか?先日、日本は最低賃金の引き上げを行った。これは消費税増税に対する施しに見えるかもしれない。しかしながら、消費税が5%から8%に変わった際、社会福祉に増税分が割り当てられる筈が、企業の税優遇でぽっかり空いてしまった穴を埋めるのに使われてしまった。かといって企業は得た利益で国力を上げるイノベーションを起こしているかと言えば、何もしていない。穀潰しに終わっている。保身に努めているだけだ。
本作で描かれる水面下の攻防とゲスな裏切りに日本の《今》ないし、《未来》を観ました。
マイク・リーなんで、ドラマチックな展開もないし、肝心な虐殺シーンが暴力から逃げたショットになっている残念さこそあれど、投票率が低く政治に無関心な日本で多くの人に観ていただきたい作品でした。
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