『トム・オブ・フィンランド』ゲイの概念を変えた男

トム・オブ・フィンランド(2017)
Tom of Finland

監督:ドメ・カルコスキ
出演:ペッカ・ストラング、ラウリ・ティルカネン、ジェシカ・グラボウスキー、ヤーコブ・オフテブロetc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ジョン・ウォーターズの年間ベスト2017にて10位にランクインした伝記映画『トム・オブ・フィンランド』が8/2(金)より日本公開されます。闇営業で謹慎処分しているレイザーラモンHGのハードゲイ・スタイルの基にもなっている画家トム・オブ・フィンランドの伝記映画です。

『トム・オブ・フィンランド』あらすじ


同性愛が厳しく罰せられた第二次世界大戦後のフィンランド。帰還兵のトウコ・ラークソネンは、昼間は広告会社で働き、夜は鍵のかかかった自室で己の欲望をドローイングとして表現していた。スケッチブックの中で奔放に性を謳歌しているのは、レザーの上下に身を包み、ワイルドな髭をたくわえた筋骨隆々の男たち――。
トウコが仲間とこっそり楽しむために描き続けたそれらの絵は、「トム・オブ・フィンランド」の作家名でアメリカの雑誌の表紙を飾ったことをきっかけに、ゲイ男性たちの希望のイメージとして世界中に広がっていく。今やゲイカルチャーのアイコンとなっている、あの美しく逞しい男性像はどのように生まれたのか?性的マイノリティに対する差別が激しかった時代、愛する人と外で手をつなぐことすらできない理不尽に苦しみ、肉親の無理解に傷つき、それでも描き続けた彼の原動力は何だったのか? そして、フレディ・マーキュリー、ファションデザイナーのトム・フォード、写真家のロバート・メイプルソープをはじめ、無数の人々に勇気とインスピレーションを与えた彼の絵の魅力とは――。
伝説のアーティストの知らざれる生涯が今、スクリーンに蘇る。
※Filmarksより引用

抑圧と解放

トム・オブ・フィンランドはゲイカルチャーの歴史を変えた人物である。従来、同性愛は性的マイノリティとして社会から抑圧され、弱者として陰日向を生きていた。それに準じるように文化も隠されたものとなっていた。しかし、トム・オブ・フィンランドは、レザーに身を包み、ムキムキマッチョの美でもって同性愛を表現した。筋肉の誇示という解放を、レザーという抑圧を思わせるファッションで包む。その鬩ぎ合いが非常に刺激的で、その後のゲイカルチャーをガラリと変えた。その影響はQUEENのフレディ・マーキュリーにも及んだ。本作はそんなトム・オブ・フィンランドの半生に迫る。第二次世界大戦時、戦争という極限状態の裏側で同性愛を開花させていく彼は、戦後自室でマッチョな絵を描くことを趣味としていた。こっそり描くことに背徳感と歓びを得ていた。そんな彼が、ヒョこんなことからアメリカの雑誌の表紙に取り沙汰されたことから抑圧された欲望を解放していく。そんな彼の解放が、今まで社会の片隅で同性愛や差別に苦しんでいた者たちを勇気付けていく。その勇気を糧に彼は上へ上へと上り詰めていく。

正直、思いの外ドラマティックな演出はなく、また伝記映画としては物足りない物があった。しかし、それはトム・オブ・フィンランドという衝撃のアーティストにスキャンダル性を求めてしまった自分のゲスい心が原因であり、本当に申し訳ない気持ちになった。ただ、あまり面白くなかったのは変えようのない事実だ。しかしながら、本作が日本では18歳未満が観られないというのは流石に問題だと感じた。せめてR15でしょう。思春期、性の揺らぎに葛藤し、中には自分が同性愛者であったりトランスジェンダーであることに気づき、苦労する可能性のある時期にこそこの作品を観て欲しいと感じた。

トム・オブ・フィンランドが人生と絵でもって欲望と解放の揺らぎと闘い続けたことは、社会に息苦しさを感じている者へ勇気を与えてくれると言えよう。

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