『フェイドTOブラック』シネフィル程この映画を観なくてはならない…

フェイドTOブラック(1980)
Fade to Black

監督:バーノン・ジンマーマン
出演:デニス・クリストファー、リンダ・カーリッジ、ティム・トマーソンetc

評価:100点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近まで知らなかったのですが、イエジー・スコリモフスキ『早春』以上に映画ファン向けの童貞映画が存在していた。その名も『フェイドTOブラック』。今日はこの作品の魅力について語っていきます。

『フェイドTOブラック』あらすじ


映画マニアの青年が、数々の名画をまね、殺人を繰り返すサイコ・スリラー。脚の不自由な叔母と二人で暮らすエリック。彼は大の映画マニアで、その部屋はポスターやスチルで埋め尽くされていた。ある日、モンローそっくりの女に約束をすっぽかされ、「死の接吻」を見ていた彼は、口うるさい叔母に怒り、リチャード・ウィドマークを真似し、車椅子の彼女を階段から突き落とす……。
Yahoo!映画より引用

シネフィル程この映画を観なくてはならない…

この映画はまるでゴダールの引用芸にしっかりとしたドラマが乗ったような作品だ。

主人公の青年はニートボーイに等しい存在。家に引きこもり、暇さえあれば映画を観ている。金は全部映画館代に消えていく生活。親はそんな彼を口うるさく怒る。そんな中、ダイナーでマリリン・モンローそっくりな女性と出会い、デートまでこぎつけるのだが、彼女にデートをすっぽかされてブチギレ。西部劇やフィルムノワールのヴィランになりきって人々を皆殺しにするという内容です。

まず、映画の引用が鋭く、映画オタク程ニヤニヤします。カノジョを口説く際、気持ち悪い格好で、「ねぇねぇ『七年目の浮気』でマリリン・モンローが観ていた怪奇映画のタイトルは分かるかい」と訊く。そして彼の脳内をシンクロさせるように『大アマゾンの半魚人』の映像がシンクロしていく。そして、カノジョがデートをすっぽかした怒りで、カノジョを殺しに行くのだが、そこでのショットは『サイコ』を完全にコピーする。また、カノジョの風格はテクニカラー時代の色彩を意識しており、ファッションはドギツイ赤ベースなのだが、なんと生足まで赤味がかかっている完全なテクニカラー的演出が施されている芸の細かさ。バーノン・ジンマーマン監督の映画愛に感銘受ける。

と同時に、あまりに痛すぎる青年の活動を目にし、シネフィルと呼ばれる映画狂はハッとさせられる。自分も気持ち悪いマウントを取ろうとしているのではと。シネフィル同士の映画クイズバトルが、『カサブランカ』や『マルタの鷹』の主人公の名前を当てさせるどうでも良いものであり、ネチネチとマウントを取ってくる。カノジョとのデート会話で、『メリー・ポピンズ』と『サウンド・オブ・ミュージック』の二本立てを観たとカノジョが語れば、間髪入れずに「ジュリー・アンドリュース特集だねぇ」と自分の知識をひけらかす。

あまりに酷い有様なのですが、やはりギクリとさせられます。

本作はあまり映画好きの間で話題にならない作品なのですが、この作品こそ映画ファンの道徳映画として必修科目にした方が良いのではと感じました。

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