ザ・バニシング-消失-(1988)
Spoorloos
監督:ジョルジュ・シュルイツァー
出演:ベルナール=ピエール・ドナデュー、ジーン・ベルボーツ、ヨハンナ・テア・ステーゲetc
評価:40点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
4/12(金)から、キューブリックを驚愕させた伝説的映画『ザ・バニシング-消失-』が公開される。本作はオランダのジャーナリストであるティム・クラッベが出版した『ゴールデン・エッグ』の映画化である。監督は、リヴァー・フェニックスの遺作を『ダーク・ブラッド』を力づくで完成させた鬼才・ジョルジュ・シュルイツァー。後に同監督、ジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロックでリメイクされた伝説的作品が日本で初劇場公開するのである。
本記事は、そんな『ザ・バニシング-消失-』のネタバレ考察記事です。
『ザ・バニシング-消失-』あらすじ
ある日突然消えた恋人を捜す執念と亡霊にとり憑かれたかのような男が、次第に精神的に追い詰められていく姿を描いたサイコサスペンス。1988年に製作され、93年には監督のジョルジュ・シュルイツァー自身のメガホンにより、「失踪 妄想は究極の凶器」(ジェフ・ブリッジス、キーファー・サザーランド、サンドラ・ブロック出演)としてハリウッドリメイクもされている。日本では長らく劇場未公開だったが、2019年4月に劇場公開が実現。オランダからフランスへ車で小旅行に出がけたレックスとサスキアだったが、立ち寄ったドライブインで、サスキアがこつ然と姿を消してしまう。レックスは必死に彼女を捜すが手がかりは得られず、3年の月日が流れる。それでもなお捜索を続けていたレックスのもとへ、犯人らしき人物からの手紙が何通も届き始める。
※映画.comより引用
サイコサスペンスの基礎
本作は、サイコサスペンスのお手本のような作品だ。同じくオランダ出身監督ポール・バーホーベンの『氷の微笑』と同様、一見ミステリーのように見えて重きは、謎解きする過程で変化する心情に特化していると言える。なんたって、本作は冒頭で明らかに犯人を1人に絞ることができるのです。ギプスを嵌めたギョロッとした目の男。サスキアを誘拐する人は彼しかいないのだ。観客は、神の目線で、サスキアを探す男レックスとサスキアを誘拐したであろう男レイモンが接触するまでの過程を眺めることとなる。だから純粋なミステリーを求めている人や、直接的な恐怖を求めている人には肩透かしを食らうことでしょう。
この作品の魅力は、「運命の糸」に抗うことのできない男の生き様にあります。明らかにサイコパスだとわかっていながらも、サスキアを、真実を知るためにレイモンの誘いに乗ってしまうレックス。絶対に自分の身が危険にさらされるとわかっていながら、謎の引力に引っ張られていくのだ。サスキアを自分が人を殺せるのか試したかったがためにレイモンが誘拐していたことに気づく。そしてレイモンから差し出される飲み物を飲み、気がつくと棺桶に入れられてゲームオーバーとなるところで物語は終わってしまうのだ。
これって、映画のオフ会等で、絶対関わったらマズイと思いつつも謎の引力で逃げられないことに近い恐怖だと言える。それ故、似たような経験をしたことがあるひと程ゾオーーーッとすることでしょう。
本作の影響
実はこの映画、いろんな作品に影響与えているといえる。会話だけで、人を洗脳する様の不気味さは黒沢清を思わせる。またラストの胸糞悪さを引き伸ばした作品として『[リミット]』があります。さらには、消えた女性の朧げな記憶や本作に渦巻く空気感はビー・ガンの『ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』でも引用されていたりします。そう考えると、本作はサイコサスペンスの見本とでも言えよう。『失踪 妄想は究極の凶器』と併せて観たい一本でした。ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!
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