サマー・オブ・84(2018)
Summer of 84
監督:フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル
出演:グラハム・ヴァーチャー、ジュダ・ルイス、ケイレブ・エメリetc
評価:60点
チャリンコ版『マッド・マックス』としてカルト的人気作となっている『ターボキッド』の監督が再び、ノスタルジー溢れる手作り映画で帰ってきた!今回のテーマは青春ホラー!。まるでスティーヴン・スピルバーグとスティーヴン・キングが出会ったかのような雰囲気から日本でも話題となっていました。そんな本作、日本では8/3(土)より新宿シネマカリテより公開されます。ブンブン、一足早く鑑賞したので感想を書いていきます。『サマー・オブ・84』あらすじ
思春期まっただ中のオタク少年たちが隣家の警察官を殺人鬼と疑い、独自に調査を始めたことから、思いがけない恐怖に直面する姿を描いた青春ホラー。カナダの映像制作ユニット「ROADKILL SUPERSTARS(RKSS)」(フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル)が、1980年代のスラッシャー映画やホラー、サスペンス、青春映画にオマージュをささげて描いた。84年夏、アメリカ郊外の田舎町に暮らす好奇心旺盛な15歳の少年デイビーは、向かいの家に暮らす警察官マッキーが、近隣の町で発生している子どもばかりを狙った連続殺人事件の犯人ではないかとにらみ、親友のイーツ、ウッディ、ファラディとともに独自の調査を開始。しかし、そんな彼らの行く手には、想像を超えた恐ろしい現実が待ち受けていた。
※映画.comより引用
漆黒の『スタンド・バイ・ミー』
この作品は『ラ・ラ・ランド』級に厄介な作品だ。映画単体で楽しもうとすると、あまり怖くなく、オチも変なので肩透かしを食らうことでしょう。
実は『サマー・オブ・84』は、『ラ・ラ・ランド』がミュージカル映画史を扱った論文だったように、『スタンド・バイ・ミー』論となっている。つまり論文映画なのだ。だから、スティーヴン・キングや『スタンド・バイ・ミー』のことを念頭に入れてみないと退屈してしまうかもしれない。
まず、この作品は蝶番のように『スタンド・バイ・ミー』の反転した世界を描き出す。
『スタンド・バイ・ミー』が死への好奇心から遠くへ仲間と旅する話になっているのに対し、こちらは死への好奇心から近隣を仲間と詮索する話となっている。昼夜もこの2作は反転している。
『スタンド・バイ・ミー』が、スティーヴン・キングの中ではホラー感がないけれど、あの時代に量産されたスティーヴン・キングホラー風に描いたら面白い化学反応を生むのでは?ただ、往年のスティーヴン・キングホラーを傑作に押し上げる隠し味に何を入れれば良いのだろう?『グーニーズ』的演出?スピルバーグ的演出?
とにかく製作陣は『スタンド・バイ・ミー』をスティーヴン・キングホラーの軸に如何にして近づけるかに取り憑かれたように演出に技巧を凝らしていて、独特な雰囲気が生まれています。
なので、頭でっかちでキツイ描写が多い。
ここまで、拘りに拘りぬいた作品だけに我々が忘れてしまったものを思い出させてくれます。携帯電話もパソコンも普及していない時代、謎や噂は、自分たちで少しずつピースを集めて真実へ近づいていった。今はインターネットの発達で、なんでも情報が簡単に手に入る。ヒントが無数にインターネットに広がっている。ただ、その時代に生きる者がもはや味わうことが難しくなってしまった、少しずつ真実を自分たちの手で掴んでいく面白さがあの時代にはあった。トランシーバーで連絡を取り合い、双眼鏡で対象を観察する。ゴミ箱から資料を入手し、仲間とああでもない、こうでもないと知恵を出し合う。ブンブンの幼少時代が蘇ってきて、郷愁の甘い蜜が身体全体に染み渡りました。
とにかく、最低でも『スタンド・バイ・ミー』好きにオススメしたい作品でした。
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