ある女流作家の罪と罰(2018)
Can You Ever Forgive Me?
監督:マリエル・ヘラー
出演:メリッサ・マッカーシー、リチャード・E・グラント、ドリー・ウェルズetc
もくじ
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第91回アカデミー賞で主演女優賞(メリッサ・マッカーシー)、助演男優賞(リチャード・E・グラント)、脚色賞(ニコール・ホロフセナー)の3部門にノミネートされた『キャン・ユー・エバー・フォーギブ・ミー?(Can You Ever Forgive Me?)』を観ました。日本公開は未定だが、既に『ある女流作家の罪と罰』という邦題で公開することが決まっているようです。
『ある女流作家の罪と罰』あらすじ
When Lee Israel falls out of step with current tastes, she turns her art form to deception.
ブンブン訳:リー・イスラエルが趣味の領域から堕ちた時、彼女の芸術は欺瞞に変わる…
※IMDbより引用
今来ているスタッフが送る、小粋な実録サスペンス
本作は、リー・イスラエルの同名自伝の映画化。これを、今イケイケなスタッフで製作されました。監督はジョン・ウォーターズの2015年映画ベストテンで7位に選出された『ミニー・ゲッツの秘密(THE DIARY OF A TEENAGE GIRL)』のマリエル・ヘラー。主演は、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』で注目され、リメイク版『ゴースト・バスターズ』にも出演しているメリッサ・マッカーシーです。彼女は『パペット大騒査線 追憶の紫影』、『ライフ・オブ・ザ・パーティー』の功績によりポンコツ映画の祭典ラジー賞にもノミネートされています。また、今回アカデミー賞脚色賞にノミネートされたニコール・ホロフセナーは『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』、『ギルモア・ガールズ』といったドラマシリーズ畑で活躍している人物です。そんな今が旬のスタッフが作る、実録ドラマはアカデミー賞3部門ノミネートも納得の作品でした。
1.メリッサ・マッカーシーの新境地
そこまでブンブンは、メリッサ・マッカーシーの映画を観ている訳ではないのですが、彼女の豪傑なコメディアンというイメージを取り払い、彼女の新境地が見えてくる作品でした。そして、それが物語ともリンクしていてとても面白い。本作は、業界から干され、バーで呑んだくれている作家リー・イスラエルがムショ上がりの旧友と再会するところから物語が転じていきます。手紙の捏造したらお金を稼げるかもしれないと思ったイスラエルは、恐る恐る棚から引っ張り出した著名人の手紙を複製し、本屋さんに売り込む。すると、意外なことにすんなり200$近くで売れる。そして、生計を立てるために次第に本業の作家業から手紙捏造業にシフトしていく。
マリエル・ヘラー監督は、徹底してメリッサ・マッカーシーのオーラと手つきに注目した。ちゃっかりさんなんだけれども時折後ろめたさを感じる、薄い負のオーラをしっかりと捉えているのです。やりたいことは本を書くこと。しかし、才能は手紙の捏造。彼女は、タイプライターと向かい合い、「本を書くか?複製するか?」を悩む。その際の彼女の表情が、観客の心を掴みます。我々も、人生を歩む上で、理想と現実にぶち当たる。もちろん本作のように、犯罪に傾倒するか否かを悩む人はそうそういないだろうし、考えてはいけないことなんだけれども、彼女と似た状態なら誰しもが経験ある。その葛藤や、理想と現実の間にあるギャップをメリッサ・マッカーシーは体現してくれます。彼女のキャリアイメージも映画を助け、観る人に共感を与えてくれる作品となっています。
2.一級のバレるかバレないかサスペンス
本作は、一般的な犯罪モノと比べてリアル路線な為、観ていてハラハラドキドキする場面が沢山あります。特に本屋での売買シーン。イスラエルは顔の奥に真実を隠そうとしているのですが、観客からすれば岡目八目バレバレです。いかにも胡散臭く、バレそうなオーラしか出ていない。綱渡りのような駆け引きに、観る者は釘付けになります。また、映画が進むごとに、売る手紙の難易度が高くなっていくので、まるでゲームをプレイしているかのような面白さがあります。難易度が高まるにつれ、メリッサ・マッカーシーの動きが機敏になるところも注目です。
最後に…
正直アカデミー賞を獲れるかと訊かれたら、全滅ですと答えるだろう。今回は相手が強いので、どの部門も厳しいとは思うのですが、海外の評判通りとても面白い作品でした。これは早く日本公開することを祈ります。多分、配給会社はアカデミー賞の結果を見て公開日を決めると思うので、3月、4月くらいには公開日が決まるのではと思います。
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