オーソン・ウェルズ最期の作品
先日、Netflixがオーソン・ウェルズ未完の作品『風の向こうへ』を配信した。本作は1970年代に製作が始まったものの、なかなか完成できず、遂に陽の目を浴びることなくオーソン・ウェルズの死によって中止となった企画。それを鬼才ピーター・ボグダノビッチ主導となって完成させた。そして同時に、製作舞台裏を描いたドキュメンタリー『オーソン・ウェルズが遺したもの』も配信された。二本鑑賞したので、それぞれ感想を書いていく。
もくじ
風の向こうへ(2018)
The Other Side of the Wind
監督:オーソン・ウェルズ
出演:ジョン・ヒューストン、オヤ・コダール、ピーター・ボグダノビッチetc
評価:60点
オーソン・ウェルズが晩年に製作を進めていたが、完成することなく亡くなり頓挫した企画『風の向こうへ(The Other Side of the Wind)』をNetflixが彼の遺したメッセージを基に、脇にピーター・ボグダノビッチを携え完成させた!昨日配信されていたので観た。『市民ケーン』や『審判』、『フェイク』、『オセロ』と度々登場としては斬新な手法を取り込み、尚且つ《映画》として物語る天才的技術を魅せてきたオーソン・ウェルズは晩年もギラギラしていた。
まず、オーソン・ウェルズがジャック・ケルアックの『路上』を映画化しようとしていた話は有名だが、割と本気で映画化しようとしていたことが分かる。ジャズの即興的なリズムに合わせ、若者の旅が映し出され、ビートニクについて語る。その無軌道で、即興的に映像を繋ぎ合わせ、グルーヴ感を生み観る者に高揚感を与える。『路上』愛読者として、オーソン・ウェルズ映画版を観たかった!と思わせるシーンの連続に圧倒される。
そして、映画の中の世界、映画を作る者の世界、映画を観る者の世界が入り乱れていく。それがどれもカッコイイヴィジュアルで惹き込まれる。
正直、オーソン・ウェルズの良さである「物語をしっかり語りながら、技術革新する」という強みがなくなり、ゴダールのような映像闇鍋になってしまったのは残念だが、インスピレーション掻き立てられる作品であった。
オーソン・ウェルズが遺したもの(2018)
They’ll Love Me When I’m Dead
監督:モーガン・ネヴィル
出演:オーソン・ウェルズ、アラン・カミングetc
評価:70点
ふと、ホドロフスキー監督は『DUNE』を完成させないで良かったと思った。オーソン・ウェルズの未完の映画『The Other Side of Wind』はNetflixの手によって無理矢理完成させられたが、やはり《違う》と思った。
そして、『風の向こうへ』の製作過程を追った『オーソン・ウェルズが遺したもの』を観たら、断然こっちの方が面白かった。ドラマがあった。
彼は言う
「偶然を釣りに行こう!」
かくして映画製作が始まった。脇に鬼才ピーター・ボグダノビッチ、ミューズであるオヤ・コダールを携え。しかし、資金繰りは厳しく、AFIから生涯業績賞授賞式に呼ばれた際に本作の宣伝をするものの、誰も金は出してくれなかった。
正直、このドキュメンタリーを観てもオーソン・ウェルズの気持ちなど分からないのだが、彼は神から地に堕ちそこから這いつくばるようにして、映画史に美しい傷跡をつけたことは分かる。
『オーソン・ウェルズが遺したもの』と『風の向こうへ』は2本で1本なので、是非両方挑戦してみてください。
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