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『リバーズ・エッジ』グザヴィエ・ドラン譲りのアスペクト比マジックが生む閉塞感の解放

『リバーズ・エッジ』グザヴィエ・ドラン譲りのアスペクト比マジックが生む閉塞感の解放

リバーズ・エッジ(2018)
RIVER’S EDGE(2018)


監督:行定勲
出演:二階堂ふみ、
吉沢亮、上杉柊平etc

評価:60点

岡崎京子の同名漫画を行定勲監督が映画化した『リバーズ・エッジ』が公開された。本作は、原作に惚れ込んだ二階堂ふみが、行定勲に企画を持ち込み映画化された異色作。ベルリン国際映画祭にも出品された本作だが、果たして…

『リバーズ・エッジ』あらすじ

女子高生の若草ハルナは、夜な夜な学校に忍び込んだところ同級生の山田一郎が紐に縛られ、閉じ込められているのを発見する。彼は、ハルナの元恋人・観音崎に虐められていた。妙な繋がりからハルナは山田一郎に興味を示す。そんな中、彼から河原に放置された人間の死体を愛していること告白される。そして、ハルナに付きまとう摂食障害の後輩吉川こずえもその死体を愛していた…

体感時間5時間の中に込められた青春の辛酸

本作は観ている間、正直退屈であった。2時間の作品にも関わらず体感時間が5時間に感じる程、演出がくどく、暗くキツかった。そして、暴力とセックス、不埒にまみれた混沌に脳内をぐちゃぐちゃかき乱されて終わった本作を、帰りの道中で一欠片一欠片、拾い集めていくうちに段々と面白くなっていく不思議な作品であった。

本作は、多感な思春期時代に誰にも言えぬコンプレックスやイジメを抱えていた者にとって今年最も忘れがたき作品の一本となるだろう。要は学校という《閉塞空間》。長くて辛い、地を這うように、陰日向で必死に受難の道中を歩み解放されるまでを描いている。

本作には、摂食障害者、同性愛者、見た目にコンプレックス持つ者、妊娠してしまった女と様々な問題を抱えたキャラクターが登場する。しかし、どのキャラクターも学校生活という空間ではそのコンプレックスが周りにバレないように抑圧している。例えば、摂食障害者は美術室やトイレで飯をこっそり貪り食う。同性愛者は見せかけの彼女を作り何事もないように振る舞う。

ただ、学校という空間は狭い。息苦しくて息苦しくて今にも怒りが爆発しそうだ。それを彼らは夜な夜な、ラブホテルや河原で爆発させる。本能に任せ、自分をめちゃくちゃにしようとする。この怒りの感情。観ている時は、他人事のように思っていたのだが、観終わった後、ジワジワと「私の映画だ!」と魂が揺さぶられた。

そう、『リバーズ・エッジ』は観終わった後から始まる物語だったのだ。

拘りのアスペクト比

本作は、《閉塞感》を表現する為に横幅が狭い4:3スタンダードサイズのアスペクト比で描かれる。このアスペクト比は最近だと、ヴィゴ・モーテンセン主演の『約束の地』、ケイシー・アフレック主演『A GHOST STORY』で使用されており、どちらも話題となった。
ただ、本作が《閉塞感》表現として最も影響受けた作品は恐らくグザヴィエ・ドランの『MOMMY/マミー』だと言える。『MOMMY/マミー』では前代未聞の正方形というアスペクト比で、シングルマザーの奮闘を描いている。終盤、この正方形のアスペクト比がグーーーっと横に広げ、希望の光を魅せるという表現があるのだが、まさに『リバーズ・エッジ』でも終盤に全く同じようなシーンがあるのだ。
混沌のイバラ道の末に若草ハルナがたどり着く世界は、横に長い画面の世界。閉塞感からの脱却を示す。そして流れる小沢健二の主題歌アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)。この一連のシークエンスのカタルシスは計り知れない。そしてうっかりすると、この希望の光を見逃してしまう可能性がある。なので、これから観る人は、辛くて睡魔が襲ってきてもラストだけは目をガッと刮目してください。

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